【緊急考察】Native Instrumentsの再編ニュースを受けて、今私たちが考えるべきこと

Native Instruments

音楽制作の世界に激震が走りました。 ベルリンに本拠を置く音楽制作ソフトの巨人、Native Instruments(以下、NI)社がドイツで「予備的破産手続(事業再編)」に入ったというニュースです。当スタジオ「RED IGUANA STUDIO」にとっても、これは他人事ではないニュースとなりました。今回は、このニュースの背景と、私たちがこれからどう向き合うべきかについて、私なりの視点でお話ししたいと思います。

目次

そもそもNative Instrumentsとは?

音楽制作をしていない方には馴染みのない名前かもしれませんが、現代の音楽、特に映画音楽やヒップホップ、ダンスミュージックの裏側で、彼らの製品が使われていない曲を探す方が難しいほど、絶大な影響力を持つ企業です。

革新の歴史と、ハードウェアへの「懸念」

1996年に設立されたNI社は、パソコンで楽器をシミュレートする「ソフトウェアシンセ」の先駆けでした。

  • Reaktor (当初はGenerator): 無限の音作りを可能にしたモジュラーシステム。
  • Kontakt: 世界中のスタジオで標準となっているサンプラー。
  • Maschine / Traktor: ハードウェアとソフトウェアを融合させ、制作やDJのスタイルを一変させました。

まさに、デジタル音楽制作の「背骨」を作ってきたメーカーと言えます。

しかし、一人の技術者としての視点を加えれば、手放しで賞賛できることばかりではありません。私はこれまで、不具合を起こしたNIのハードウェア製品の修理を自ら何度か行った経験がありますが、正直なところ、内部で使用されているパーツや設計思想に関しては、お世辞にも「高品質である」という印象は抱けませんでした。 「これはすぐに壊れてしまうだろうな」と驚くような簡素な作りの物も多く、ソフトウェアの革新性にハードウェアの堅牢性が追いついていない……そんな危うさを、現場の肌感覚として以前から感じていたのも事実です。

巨大化した「Soundwide」グループの全貌

近年、NI社は投資会社の主導により、音楽制作の主要プレイヤーを次々と吸収し、2022年に「Soundwide」という巨大な親会社を設立しました。この連合に参加した主な顔ぶれは以下の通りです。

  • Native Instruments : 制作・パフォーマンス環境の核。
  • iZotope : AIによるマスタリングやノイズ除去で革命を起こした、現代の必須ツール群。
  • Plugin Alliance : 100万人以上のユーザーを持つ、ハイエンドプラグインの巨大販売・マーケティングプラットフォーム。
  • Brainworx : アナログ機材の精密なモデリング技術を誇る、Plugin Allianceの技術的中核。
  • Sound Stacks : オーディオ開発のオープンソース規格「JUCE」の生みの親たちが設立した、次世代オーディオプラットフォーム開発企業。

これら5つの強者が一つにまとまり、最終的にはすべて「Native Instruments」ブランドへと統合されました。しかし、この急速な巨大化と、単発販売からサブスクリプション型へのビジネスモデル転換の歪みが、今回の再編へと繋がったのではないかと考えられます。

愛用ツールへの影響と、私たちの本音

当スタジオでも、現代のプロダクションにおける「最後の砦」として、以下のツールを日々活用しています。

  • iZotope Ozone : マスタリングツール群
  • iZotope RX : ノイズ除去ツール群
  • Brainworx SHADOW HILLS Mastering Compressor Class A : コンプレッサープラグイン

今回の「予備的破産手続」は、すぐにソフトが使えなくなることを意味するわけではありません。事業を継続しながら再建を目指す手続きです。しかし、Macユーザーである私たちにとって、OSのアップデートに伴う対応が遅れることや、認証サーバーの維持に対する不安は拭えません。

そして、ここで私たちが強く思うことがあります。 それは、「日本のメーカーにもっと頑張ってほしい」ということです。

国内メーカーへのエール:失ってはいけない「信頼」の価値

シンセサイザーやキーボードなどの世界では、KORG、Roland、YAMAHAといった日本のメーカーが世界のスタンダードを席巻していました。ただ、ソフトウェア・プラグインに関しては海外勢に押されているのが現状です。

実際に機材を触り、時には中を開けてメンテナンスをする立場から言わせてもらえば、日本製のシンセサイザーや音響機器の「作り」は、本当に素晴らしい。 堅牢な筐体、過酷な使用に耐えうるスイッチやノブの感触、そして整然と配置された内部回路。そこには、使う側が安心してクリエイティブに没頭できる「道具としての信頼性」が宿っています。あの緻密で妥協のない設計思想こそが、日本が世界に誇るべき職人気質です。

海外メーカーの買収劇や経営不安に一喜一憂するのではなく、この日本独自の高い技術力と最新のデジタル環境が再び融合し、「日本発の世界標準ツール」がシーンの主役に戻ることを、私たちは切望しています。

RED IGUANA STUDIOとして

道具が変わっても、私たちがアーティストに提供する「音」への誠実さは変わりません。 もしNI社やiZotope、Brainworxの環境に変化があっても、私たちは培ってきた経験と新しい技術を駆使して、必ず理想のサウンドを形にします。

最新情報は常にチェックしていますが、使用されているクリエイターの皆さんは、まずは「今あるプロジェクトのバックアップ」と「現状の安定した環境の維持」を優先してください。

変化の激しい時代ですが、私たちはこれからも「音の武器」を磨き続け、皆さんの表現をサポートしていきます。


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