近年、TuneCoreを使って楽曲配信を始めるアーティストが増えてきました。それに伴い、「著作権の申請はどこにすればいいの?」「JASRACとTuneCoreって何が違うの?」という疑問をよく耳にするようになったため、この記事にまとめました。
TuneCoreの著作権管理サービスとJASRAC直接信託の違い、自作曲を使う際のルールまで、これ一本で大体わかるように解説します。曲を作ったら、次は「権利をどう守るか」を考えてみましょう。
0. そもそも登録しなくていいケースもある
著作権は、曲を作った瞬間に自動的に発生します。つまり、JASRACやTuneCoreに登録しなくても、あなたの曲はあなたのものです。
ただし、登録しないと「使用料を回収する仕組み」がないだけです。活動規模が小さい・収益をまだ求めていない段階では、あえて登録しない選択肢もあります。まずは自分の活動フェーズに合わせて判断しましょう。
1. まず知っておきたい「TuneCoreとJASRACの関係」
比較表の前に、よく誤解されるポイントを整理します。
「TuneCore経由」でも、管理しているのはJASRAC
TuneCoreに著作権管理を申請すると、実際の著作権の管理・徴収はJASRAC(またはNexTone)が行います。TuneCoreはあくまで窓口と分配を代行するサービスです。
アーティスト → TuneCore(窓口・分配代行)→ JASRAC / NexTone(実際の管理・徴収)
つまり「TuneCoreに登録=JASRACとは別のサービス」ではなく、TuneCoreを通じてJASRACに登録しているという三層構造になっています。TuneCoreの15%手数料は、この代行サービスへの費用と考えるとわかりやすいです。
JASRAC直接信託は「曲」ではなく「人(作家)」にかかる契約
JASRAC直接信託で注意が必要なのは、これが特定の曲を登録する契約ではなく、あなた自身がJASRACの会員になる契約だという点です。
そのため、入会すると:
- 過去に作ったすべての曲
- 入会後に作るすべての曲
が自動的にJASRACの管理下に入ります。「この曲だけ登録して、あの曲は自分で自由に管理したい」という選択ができないのが、TuneCoreとの最大の違いです。
2. TuneCore vs JASRAC 比較表
| 項目 | TuneCore 著作権管理 | JASRAC 直接信託 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 0円 | 約27,500円(信託申込金) |
| 手数料(還元率) | 15%(還元率85%) | JASRAC所定の手数料(約10〜20%)を差し引いた額を分配 |
| 手続き | オンライン完結(印鑑不要) | 書類郵送・実印・印鑑証明が必要 |
| 管理単位 | 1曲ごとに選択可能 | 全曲(過去・未来の全作品) |
| 収益分配 | 自動分配機能(スプリット)あり | 代表者への一括送金のみ |
3. JASRACとNexToneって何が違うの?
著作権管理団体として有名なのがJASRACですが、もう一つ NexTone(ネクストーン) という団体もあります。
- JASRAC: 国内最大手。テレビ・ラジオ・店舗BGMなど幅広い徴収網を持つ。
- NexTone: 比較的新しい団体で、特にデジタル配信・ストリーミングに強く、手続きがシンプル。還元率もJASRACより高めとされています。
TuneCoreは現在、JASRACとNexToneの両方と提携しており、楽曲によって管理先が異なる場合があります。
4. 申請先の窓口(使い分け)
TuneCoreで管理している場合でも、利用シーンによって申請先が異なります。
| 利用シーン | 申請・確認先 | 内容 |
|---|---|---|
| ストリーミング・放送等の収益回収 | TuneCore | TuneCoreが代行して回収し、管理画面に反映。 |
| 自分のライブで歌う(免除申請) | JASRAC / NexTone | 自分で管理団体(J-TAKT等)へ利用報告。TuneCoreで管理している曲の場合は別途TuneCoreへ確認が必要。 |
| 自分のCDに入れる(免除申請) | JASRAC / NexTone | 自分で管理団体へ「自己利用届」を提出。 |
5. 「自分の曲を歌う・CDにする」時のルール
JASRACに登録しても、「自己利用の手続き」を行えば、基本的に追加料金を払わずに活動できます。
① ライブで歌う場合(演奏権)
原則: 自分のライブで自作曲を歌う場合、JASRACへ「自己利用届」を提出すれば、使用料の支払いは免除されます。
② CDを作る場合(録音権)
1,000枚までの特例: JASRACに直接登録している場合、自分で制作するCD(自主制作盤)に自作曲を入れる場合、1,000枚までであれば、事前の届出により著作権料の支払いは免除されます。
⚠️ TuneCoreで管理している曲の場合、CD録音権の扱いはTuneCoreの規約に依存します。利用前にTuneCoreへ個別に確認することをおすすめします。
6. 著作権登録のメリット・デメリット
登録することで得られる恩恵と、運用上の注意点です。
メリット
収益の最大化 YouTubeでの二次利用(他人が自分の曲を使った動画)からの広告収益や、テレビ・ラジオ放送、店舗でのBGM、ライブ演奏など、デジタル配信だけでは漏れてしまう「著作権使用料」を網羅的に回収できます。
権利の保護と証明 自分の曲が公的に登録されることで、無断使用や盗作などの権利侵害に対して強い法的根拠を持てます。
対外的な信頼性 権利関係が明確になっているため、映画やCMなどのタイアップ交渉や、他アーティストとの共同制作(コライト)がスムーズに進みやすくなります。
デメリット・注意点
「完全無料」での提供がしにくくなる 特定の友人にだけ「無料で使っていいよ」と言っても、YouTube Content IDなどが自動で反応して広告をつけてしまうなど、個別の融通が利きにくくなります。
事務手続きの手間 「自分の曲を自分で使う」たびに、免除を受けるための申請を出す手間がかかります。
クリエイティブ・コモンズとの相性 「誰でも自由に使ってOK」というライセンス(CCライセンスなど)を付与することが難しくなります。
直接交渉のハードル 小規模なタイアップ時、相手企業が「管理団体を通さず直接契約(=安く、手軽に)」したいと望む場合に、手続きが複雑化して敬遠される可能性がわずかにあります。
7. 共同制作(コライト)の場合は?
友人やバンドメンバーと一緒に曲を作った場合、著作権は作詞・作曲に関わった全員に帰属します。
登録の際は、誰がどの割合で権利を持つかを事前に決めておくことが重要です。TuneCoreには**スプリット機能(収益の自動分配)**があり、複数人での権利管理がしやすい点が大きなメリットです。一方、JASRACの場合は代表者への一括送金となるため、メンバー間での分配は自分たちで行う必要があります。
8. YouTubeのContent IDについて
著作権を登録すると、YouTubeのContent IDという仕組みが働きます。これは、自分の曲が他人の動画で使われたときに自動で検知し、広告収益を権利者に還元する仕組みです。
ただし注意点もあります。
- 自分がアップした動画にも広告が自動でつくことがある
- カバーや弾いてみた動画を投稿した友人の収益が止まる場合がある
- 「無料で使っていいよ」と伝えていても、システムが自動で反応してしまう
Content IDは便利な仕組みですが、個別の融通が利きにくいという側面も理解しておきましょう。
9. 管理先を切り替える際の注意点
TuneCoreからJASRAC直接管理へ移行することは可能ですが、以下のルールに注意が必要です。
切り替えのステップ
- TuneCoreの更新期限を確認: 1年ごとの自動更新。
- 3ヶ月前までに連絡: 更新期限の3ヶ月前までに「管理停止」を申請。
- 権利の回収: 一旦自分に権利を戻す。
- JASRACへ登録: 改めてJASRACと契約または作品届を提出。
10. 登録のタイミングの目安
「いつ登録すればいい?」という疑問はよく聞かれます。以下を参考にしてみてください。
| 活動フェーズ | おすすめの選択 |
|---|---|
| 活動を始めたばかり・収益ほぼなし | まだ登録しなくてもOK |
| ライブ・配信を定期的にやっている | TuneCoreで1曲ずつ様子を見る |
| 月間再生数が伸びてきた・年収益が数万円超 | TuneCore著作権管理を本格導入 |
| 収益が安定・年収益が数十万円規模 | JASRAC直接信託を検討 |
まとめ:どっちがいい?
「まずは手軽に、コストを抑えて始めたい」 → TuneCoreがおすすめ。事務作業(収益回収)を代行してもらうコスト(15%)と割り切れば非常に楽です。
「収益が安定し、長く音楽で食べていく」 → JASRAC直接がおすすめ。JASRACにも所定の手数料はありますが、収益が数十万円規模になってくると、TuneCoreの15%手数料よりもJASRACの初期費用(約27,500円)の方が割安になってきます。
ご相談はスタジオまで
著作権管理は、活動スタイルや収益状況によって最適な選択が変わります。「自分はどうすればいい?」と迷ったときは、お気軽にスタジオスタッフへご相談ください。一緒に考えます。
なお、当スタジオではCD制作時のJASRACへの申請代行も承っています。自主制作CDを作る予定のある方は、ぜひお気軽にお声がけください。
