本記事は2026年9月10日現在の情報をもとに執筆しています。著作権制度や各社の規約は改定されることがありますので、実際のお手続きの際は必ず各公式サイトの最新情報をご確認ください。記事末尾に出典一覧と改訂履歴を掲載しています。
曲が完成した瞬間、それはまだ「音」でしかありません。ミックスを終え、マスタリングを通し、配信ストアに並んだとき、はじめてその音は「作品」として世の中を歩き始めます。
けれど、作品が歩き出すということは、あなたの手の届かない場所でも鳴り続けるということです。誰かのカフェで。誰かのラジオで。誰かの動画の背景で。そのすべてに、本来あなたへ還るべき対価が発生しています。
著作権管理とは、その見えない足跡を回収する仕組みに他なりません。
近年、TuneCoreで配信を始めるアーティストが増えるにつれ、当スタジオにも「著作権の申請はどこにすればいいのですか」「JASRACとTuneCoreは何が違うのですか」というご相談が数多く寄せられるようになりました。そしてその多くが、すでに古くなった情報を前提に悩んでいらっしゃるのです。
この記事では、2026年9月時点の一次情報をもとに、TuneCore(チューンコア)・JASRAC(ジャスラック)・NexTone(ネクストーン) という三つの選択肢を、誤解を解きほぐしながら整理してまいります。手数料の数字だけでは見えてこない「デメリット」と「落とし穴」に、正面から踏み込みます。
そもそも、登録しなくてもあなたの曲はあなたのものです
最初に、いちばん大切なことを申し上げておきます。
著作権は、曲を作った瞬間に自動的に発生します。役所への登録も、団体への申請も、一切必要ありません。JASRACにもTuneCoreにも登録していない曲であっても、それは疑いなくあなたの作品です。
では、なぜ登録という話が出てくるのか。
登録していない状態では、「使用料を回収する仕組み」を持たないからです。誰かがあなたの曲をラジオで流しても、店舗のBGMに使っても、その対価はどこにも集金されません。権利はあるのに、財布がない状態と言えるでしょう。
ですから、判断の基準はシンプルです。回収すべき使用料が発生しているか、これから発生しそうか。 活動を始めたばかりで、まだ身内のライブと数十回の再生数しかない段階であれば、あえて登録しないという選択にも十分な合理性があります。焦る必要はありません。
第1章:まず、三つの誤解を解いておきましょう
ここが本記事の核心です。当スタジオでご相談を受けるなかで、驚くほど高い頻度で登場する誤解が三つあります。いずれも「かつては正しかった情報」が、更新されずに流通し続けているものです。
誤解① 「JASRACは入るのに27,500円かかる」
これは現在、誤りです。 JASRACの信託契約申込金は無料になりました。
かつては著作者27,500円、音楽出版社82,500円という申込金が必要でしたが、JASRACは2020年9月契約分(同年7月以降の申し込み)からこれを撤廃しています。現在、JASRACの公式FAQには「申込金・契約金・更新料・楽曲登録料などは一切かかりません」と明記されています。
ではなぜ、27,500円という数字がこれほど広く語られ続けているのでしょうか。
理由はおそらく二つあります。ひとつは、単純に情報が古いまま残っていること。もうひとつは、「信託者」と「会員」の混同です。
- 信託者……JASRACに著作権の管理を委託する契約(信託契約)を結んだ方。無料
- 準会員……信託者のうち、JASRACの運営に関与し福利厚生を受ける立場。入会金25,000円・年会費4,000円
- 正会員……準会員のうち一定の条件を満たした方。年会費12,000円
つまり、25,000円という入会金は「組織運営に参加したい方が任意で払うもの」であり、著作権管理そのものには関係がありません。楽曲の管理を任せたいだけなら、費用はゼロです。
なお、徴収・分配や管理手数料の取り扱いに、信託者と会員の差はありません。
あわせて「JASRACの申請は面倒」という評判も、現在はかなり薄れています。 かつては戸籍謄本や印鑑登録証明書、実印、履歴書、作品利用申告書などを郵送する必要がありました。現在はオンラインから必要情報を入力し、本人確認書類(運転免許証等)を用意する形に整備されています。著作者の場合、申込受付完了後最短20日で契約が発効し、毎月10日までの申込であれば月内に発効します。書面での申込を希望する場合も、問い合わせフォームから必要書類を取り寄せられます。
「手続きの煩雑さ」を理由にJASRACを避けているのであれば、その前提は一度見直す価値があります。
誤解② 「自主制作CDは1,000枚までなら無料」
これも現在は古い情報です。 上限は2,000枚に拡大されています。
現行の自己利用制度における複製の規模上限は、同一コンテンツを複製する媒体の総数2,000まで(媒体の種類ごとに2,000まで)です(改定が行われた具体的な時期については、公式に明確な告知を確認できていません。正確な時期が必要な場合はJASRAC公式サイトでご確認ください)。
1,000枚という数字は、長らく自主制作盤の目安として語られてきました。当スタジオでも「1,000枚までは無料ですよね」と確認されることが非常に多いのですが、いまはもう一段、余裕があります。詳しい条件は第8章で整理いたします。
誤解③ 「NexToneは法人(音楽出版社)しか契約できない」
これも過去の話です。 現在は個人でも管理委託契約を結ぶことができます。
NexToneは以前、原則として音楽出版社を対象とし、演奏権の管理も行っていませんでした。そのため「個人には縁のない団体」という認識が業界内に定着していました。しかし現在、NexTone自身が個人での契約が可能であることを公式に案内していますし、コンサート・イベントでの利用申請フローも整備されています。
そしてこの誤解が解けると、選択肢の地図が大きく描き変わります。曲単位で管理を選べるのは、TuneCoreだけではないのです。
第2章:三者の「立ち位置」を正しく理解する
比較表を眺める前に、それぞれが法的にどういう存在なのかを押さえておきましょう。ここを曖昧にしたまま手数料だけを比べても、判断を誤ります。
TuneCore ── 1年間、著作権を「譲渡」する
TuneCoreの著作権管理サービスは、しばしば「JASRACへの申請代行」と説明されます。実務としてはその通りなのですが、契約の実態はもう少し重いものです。
TuneCoreの規約名称は「音楽著作権の期間譲渡に関する規約」。つまり、あなたはTuneCoreに著作権を1年間譲渡し、TuneCoreが著作権者(音楽出版社に相当する立場)としてJASRACへ届出を行うという構造です。
あなた(著作者)
↓ 著作権を1年間 期間譲渡
TuneCore Japan(この期間の著作権者・出版社ポジション)
↓ 作品届
JASRAC(管理・徴収)
↓ 分配
TuneCore(15%を控除)→ あなた(85%)
「窓口の代行」ではなく「一時的な権利の移転」。この理解が、次の二つの制約を自然に説明してくれます。
- 譲渡期間中(1年間)は、原則として管理停止ができません
- 停止するには、期間満了の3ヶ月前までに手続きが必要で、しなければ自動的に1年延長されます
なお、届出申請の取り下げも原則として受け付けられていません。「とりあえず出してみる」が効かないサービスであることは、はっきり意識しておくべきでしょう。
また、TuneCoreの公式説明では届出先は「著作権管理事業者(JASRAC等)」とされ、管理開始後は順次JASRACの作品データベース「J-WID」に掲載されます。NexToneについては、届出前の重複確認先としてデータベースが案内されている形です。「JASRACとNexToneの両方から選べる」と説明されることがありますが、そこは断定を避け、必要に応じてTuneCoreへ直接ご確認いただくのが確実です。
JASRAC ── 「信託」であり、権利は移転する
JASRACは1940年の業務開始から一貫して「信託」による著作権管理を行っています。信託契約を結ぶと、委託者の有する全ての音楽著作権がJASRACに移転します。
権利が移転するからこそ、無断利用があった場合にJASRAC自身が著作権者として法的措置を取りやすいと一般に解されています。委任契約で権利が移転しない団体では事業者自身が著作権者として訴訟を提起することは難しいとされており、そこは信託スキームならではの強みと言えるでしょう。
一方で、権利が移転している以上、自分の作品を自分で使う場合でも原則として所定の手続きと使用料の支払いが必要になります。これが「自分の曲なのにお金を取られる」という有名な話の正体です。ただし後述する自己利用制度があり、実際の負担は多くの場合ゼロに収まります。
そして、しばしば見落とされる点。JASRACは「曲単位」では選べませんが、「権利の種類」単位では選べます。 契約時にすべての権利を委託するか一部を除外するかを選択でき、管理委託範囲は年に1度変更できます。「録音権等だけは自分で持っておく」という設計も可能なのです。
NexTone ── 「委任・取次」であり、権利は移転しない
NexToneの契約形態は委任契約における「取次ぎ」です。著作権は移転しません。
この違いが生む最大の実務上のメリットが、任意の楽曲だけを登録できるという点です。管理を任せたい曲だけをシステム(PlayN)上で登録すればよく、他の曲は自分の手元に残せます。TuneCoreのような「曲単位の選択」を、権利移転なしに実現できる形と言えるでしょう。
申込や管理委託契約締結に関する手続き費用、年会費も一切かかりません。
また、他の管理事業者と既に契約している場合でもNexToneとの契約は可能です。ただし同じ管理範囲を重複させることはできないため、事前に両事業者へ管理範囲を確認しておく必要があります。JASRACは信託契約で全楽曲の権利が移転するため、契約の時点で重複を避ける設計が必要になります。
第3章:2026年版・三者比較表
以上を踏まえて、あらためて整理いたします。
| 項目 | TuneCore 著作権管理 | JASRAC 直接信託 | NexTone 管理委託 |
|---|---|---|---|
| 契約の性質 | 著作権の期間譲渡(1年・自動更新) | 信託(著作権が移転) | 委任・取次(権利は移転しない) |
| 初期費用 | なし(※配信プラン加入が前提) | 無料(申込金・登録料なし) | 無料 |
| 年会費 | なし | なし(信託者の場合) | なし |
| 手数料 | 著作権収益の15%(還元率85%) | 利用区分ごとの管理手数料を控除 | 利用区分ごとの管理手数料を控除 |
| 手続き | オンライン完結 | オンライン申込が可能(本人確認書類) | オンライン(事前審査あり) |
| 契約までの期間 | 審査あり | 著作者は申込受付完了後 最短20日 | 事前審査を経て契約 |
| 管理単位 | 1曲ごとに選択可能 | 全曲(ただし権利の種類単位で除外可・年1回変更可) | 任意の楽曲のみ選択可能 |
| 開始条件 | 要件なし(配信プランのみ) | 過去1年以内の第三者利用実績が必要 | 過去1年以内の第三者利用実績が必要 |
| 管理地域 | 国内のみ | 国内+海外団体経由 | 国内+国外地域 |
| 収益の反映 | 四半期ごと(3・6・9・12月)月末予定 | 年4回(3・6・9・12月) | 3ヶ月ごと(3・6・9・12月)に権利確定 |
| 収益分配 | スプリット機能で自動分配 | 分配明細つきで各権利者へ | 分配明細をPlayNで提供 |
| 中途解約 | 期間内は不可(満了3ヶ月前までに申請) | 管理委託範囲の変更は年1回 | ─ |
比較表というものは、便利であるがゆえに危険です。ここに並んだ数字だけで決めてしまう前に、次の三章──開始条件、選び分け、海外収益──に必ず目を通していただきたいのです。この三つは、多くの記事が触れていないにもかかわらず、判断を根本から左右します。
第4章:JASRACとNexToneには「入る条件」が要ります
これは、記事や解説から驚くほど頻繁に抜け落ちる話です。そしてTuneCoreの最大のメリットが、実はここにあります。
JASRACとの信託契約には、入会要件があります。 具体的には、あなたが作詞・作曲した楽曲が、原則として過去1年以内に国内外の第三者によって利用されていることが必要です。
ここで重要なのは「第三者」という語です。JASRAC自身の解説によれば、趣味で作った曲を録音して自主制作CDを作っても、それは自己利用であって対象にはなりません。インディーズレーベルからの発売であっても、1,000枚以上プレスされ販売されているなどの条件を満たす必要があり、自主制作盤・委託盤は除かれます。
そしてNexToneにも、同様の条件があります。 個人で管理委託契約を申し込む場合は事前審査があり、契約条件と「公表実績の条件」が審査されます。公表実績の条件とは、作詞・作曲した楽曲が過去1年以内に第三者によって利用されていること(外国での利用も対象)。加えて、活動の本拠地が日本国内であること、日本国内の連絡先と送金先口座を持っていること、オンライン手続きが可能な環境があることが求められます。
つまり、構図はこうなります。
| 第三者利用実績 | |
|---|---|
| TuneCore | 不要 |
| JASRAC | 必要(過去1年以内) |
| NexTone | 必要(過去1年以内) |
ここから導かれる結論は、多くの記事が書いていることの逆です。
「収益が増えてきたから、そろそろ管理団体に直接委託しよう」 ──と思ったときに、そもそも契約できない可能性がある。
第三者による利用実績とは、たとえば他アーティストへの楽曲提供、コンサートでの第三者による演奏、放送での使用、商業流通盤での録音などです。自分のライブで自分の曲を演奏し続けている限り、いくら再生数が伸びても要件は満たされません。
この構造は、実は非常に示唆的です。管理団体への直接委託は「収益規模で選ぶもの」ではなく「活動の形で選ぶもの」なのです。 楽曲提供やタイアップといった、自分以外の誰かがあなたの曲を使う活動へ踏み出したとき、はじめて扉が開きます。
そして逆に言えば、TuneCoreの15%という手数料は「要件を問わず、いま始められること」への対価でもあります。第三者利用実績のないアーティストにとって、TuneCoreは唯一の選択肢に近い。ここを理解せずに手数料だけを比べるのは、公平な評価とは言えないでしょう。
第5章:JASRACとNexTone、どう選び分けるか
第三者利用実績という関門を越えたあと、次に迷うのがこの二択です。「JASRACとNexToneはどう違うのか」というご相談も、近年はっきりと増えました。
一覧で整理します。
| 観点 | JASRAC | NexTone |
|---|---|---|
| 契約形態 | 信託契約(著作権が移転する) | 委任契約における取次ぎ(移転しない) |
| 管理単位 | 全楽曲(権利の種類単位で除外可) | 任意の楽曲のみ |
| 無断利用への法的対応 | 著作権者として法的措置を取りやすいとされる | 権利が移転しないため事業者自身での法的対応は難しいとされる |
| 管理地域 | 国内+海外団体との相互管理ネットワーク | 国内+国外地域(2022年4月以降の契約) |
| 分配 | 年4回(3・6・9・12月)、分配明細あり | 3ヶ月ごとに権利確定、PlayNで明細提供 |
| 費用 | 申込金・年会費なし | 手続き費用・年会費なし |
| 他事業者との併用 | 委託範囲を重複させない設計が必要 | 可能(管理範囲の重複を避ければ) |
選び分けの軸は、大きく二つに集約されます。
軸①「全部預けるか、選んで預けるか」。 JASRACの信託契約では、過去に作ったものと今後作るものを含め、全ての音楽著作権が移転します。強力な代わりに包括的です。対してNexToneは、PlayNに登録した楽曲だけが管理対象。「この曲は預ける、この曲は自分で持つ」という設計ができます。整理すれば、「曲は選べないが権利の種類は選べる」のがJASRAC、「曲そのものを選べる」のがNexToneです。
軸②「権利侵害に、誰が戦うのか」。 信託契約では著作権がJASRACへ移転するため、無断利用があった場合にJASRAC自身が著作権者として法的措置を取りやすいと一般に解されています。一方、委任契約では権利が移転しないため、事業者が自ら著作権者として法的対応をとることは困難とされています。平時には見えない差ですが、作品が盗用されたとき、背後に誰が立っているかは決定的です。
そして、併用という第三の道もあります。NexToneは他の管理事業者と契約していても契約可能で、委託範囲を重複させなければよい。たとえば演奏権や放送はJASRACへ、インタラクティブ配信はNexToneへ、という張り分けです。
▶ この二社の違いは、掘るとさらに深くなります。 管理手数料の区分別比較、支分権の区分対応、JASRACからNexToneへの移籍手続き、個人契約の具体的な審査条件などは、専用記事で詳しく解説しています。 [内部リンク挿入予定:NexToneとJASRACの違い|個人契約・手数料・併用【2026年版】]
第6章:見落とされがちな決定的な軸──海外収益
ここが、当スタジオが最も強調したい論点です。
TuneCoreの著作権管理サービスは、著作権の管理地域が国内のみです。
これは公式に明記されている仕様です。したがって、あなたの曲が海外のストリーミングで再生されたり、海外のラジオで流れたりしても、そこで発生する著作権使用料はTuneCore経由では回収されません。
一方、JASRACは世界の管理団体と相互管理契約を結び、グローバルな管理体制を構築しています。2025年12月の分配では、116の外国団体を通じた分配も行われています。しかも、演奏権使用料については、JASRACの信託者であれば音楽出版社を経由せず直接分配を受けられます。
NexToneも、日本国内・国外地域の両方を管理対象としています(2022年4月1日より前の契約者は、管理委託範囲の変更申込により国外地域の管理が可能になります)。
つまり、国内限定なのはTuneCoreだけです。これは比較表のなかで、もっとも見過ごされている一行だと思います。
海外の管理団体の多くは、相互管理契約を締結している団体に権利を委託している権利者の取り分についてのみ、使用料を徴収して送金します。どこにも委託されていない権利の使用料は、徴収も送金もされないのです。
ここで、混同しやすい点を整理しておきます。
| 収益の種類 | 誰が回収するか | 海外分は? |
|---|---|---|
| 販売収益(原盤権) | TuneCoreのディストリビューション | 回収される(185カ国以上) |
| 著作権収益 | TuneCoreの著作権管理サービス | 国内のみ |
| 著作権収益 | JASRAC信託 | 海外団体経由で回収 |
| 著作権収益 | NexTone管理委託 | 国外地域も管理対象 |
つまり、「TuneCoreで海外配信しているから海外の権利も大丈夫」というのは半分だけ正しい。原盤の売上は入ってくるが、著作権使用料は取りこぼしているという状態が起こり得ます。
海外リスナーが一定の割合を占めるアーティスト、海外のプレイリストに入った経験のあるアーティストにとって、これは手数料15%の差よりもはるかに大きな金額差になり得ます。判断の軸として、必ず勘定に入れてください。
第7章:収益はいつ、どうやって入ってくるのか
「登録したのに、なかなか入金されない」というご相談も少なくありません。結論を先に申し上げれば、著作権収益は、配信の販売収益とは比べものにならないほど時間がかかります。 ここを知らないと、不安になるのも当然です。
TuneCoreの場合
TuneCoreの著作権収益は、四半期ごと(3月・6月・9月・12月)の月末に「確定レポート」および「残高」へ反映される予定とされています。ただし公式には、反映のタイミングを確約していないと明記されています。前後する可能性があるということです。
そして重要なのは、反映の条件です。著作権収益は、TuneCoreが作品利用者や著作権管理事業者等から実際に支払いを受けたタイミングで計上されます。つまり「使われた月」ではなく「お金が届いた四半期」に乗ってきます。
引き出しは残高から行い、銀行振込手数料を除いて最低1,000円以上から可能です。
なお、毎月100%還元されている配信の販売収益とは別枠の収益です。混同しやすいので、レポートを見る際は区別してください。
JASRACの場合
JASRACの分配は年4回(3月・6月・9月・12月)です。そして注目すべきは、その対象期間です。
- 2025年6月の分配は、主に2024年10月から2025年3月の使用料収入を反映
- 2025年12月の分配は、主に2025年4月から9月の使用料収入を反映
つまり、利用から分配まで、おおむね3ヶ月から9ヶ月のタイムラグがあります。 今月ラジオで流れた曲の使用料が手元に届くのは、来年になることもある。これは怠慢ではなく、全国から利用報告を集約して作品ごとに突き合わせるという作業の性質上、避けられない時間です。
分配時には、楽曲ごとに利用形態や分配額の内訳がわかる「分配明細」が提供されます。作品がいつ、どこで、どのように利用されたかを分析できるので、これは単なる入金通知以上の価値があります。自分の曲が思わぬ場所で鳴っていることを知る資料でもあるのです。
NexToneの場合
NexToneは作品届の内容にもとづき、3ヶ月ごと(3月・6月・9月・12月の各月末日)に作品の権利情報を確定し、権利確定作品について使用料の徴収・分配を行っています。分配期は作品の利用形態によって異なります。
作品届の提出期限と権利確定基準日の関係が定められているため、届出のタイミングが遅れると分配期が一つ後ろにずれます。 リリースと届出をセットで進めておくのが賢明です。
手数料は「一律」ではありません
なお、JASRACとNexToneの管理手数料は利用区分ごとに定められており、一律の率ではありません。
JASRACの場合、たとえば演奏等のうちカラオケ区分は2025年6月分配期から21%を20%へ引き下げています。正確な率は、JASRACが公開している「管理手数料届出・実施料率表」でご確認ください。NexToneも同様に利用区分ごとの実施料率を公開しており、オーディオ録音などは比較的低い率が設定されています。
「TuneCoreの15%と、JASRACの10〜20%」といった雑な比較が流通していますが、どの区分で収益が発生するかによって実効負担は変わります。 ご自身の収益がどの区分から来ているかを分配明細で把握することが、いちばん確実な検証方法です。
第8章:自分の曲を自分で使うとき──自己利用の現行ルール
JASRACに信託すると自分の曲が自由に使えなくなる、という不安はよく耳にします。結論から申し上げれば、制度を正しく使えば、多くの場合は無償で使えます。
JASRACの自己利用制度は、以下のように整理されています。
前提:「国内の使用」であること
| 使用形態 | 条件 |
|---|---|
| 演奏会等 | 開催地域が日本国内であること |
| 複製(オーディオ録音・ビデオグラム録音・出版) | 複製物が頒布される地域が日本国内であること |
| インタラクティブ配信 | コンテンツがアップロードされる地域が日本国内であること |
パターンA:対価を得ずに使う場合
作品のプロモーション目的かつ対価を得ずに利用する場合は、自己利用の届出によって、ご自身の全ての作品(音楽出版社と著作権契約がある作品を含む)を使用料の支払いなく使うことができます。会場使用料等の実費の範囲内の対価のみを得る場合も同様の扱いです。
実費に含まれるものは、演奏会であれば会場使用料・舞台費用・パンフレット等の印刷費・出演者への交通費や食事代など。複製であれば録音機器のレンタル代・スタジオ費・プレス費・印刷費などです。
具体例としては、無料コンサートでの演奏、CDやUSBへ録音して無料配布すること、楽譜や歌詞を印刷して無料配布すること、自分が運営するサイトやSNSへ音源や演奏動画を無料公開することなどが挙げられています。
ただし、利用する作品の関係権利者(あなた以外の作詞者・作曲者や音楽出版社など)が反対している場合は、通常の利用許諾手続きと使用料の支払いが必要になります。コライト作品では要注意です。
また、営利を目的とせず、聴衆から入場料等を受けず、出演者に報酬が支払われないという三条件を満たす場合は、著作権法第38条1項により、そもそも自由に演奏できます。
パターンB:対価を得て使う場合
対価を得る使用については、音楽出版者と著作権契約を結んでいない作品であり、かつ理事会で定めた規模の範囲内であることが条件になります。その上限が以下です。
| 利用形態 | 規模の上限 |
|---|---|
| 演奏会等 | 入場料 × 会場定員数 ≦ 400万円 |
| 複製(CD・DVD・出版など) | 複製数2,000まで(媒体の種類ごとに2,000まで) |
| インタラクティブ配信 | 「配信期間3か月まで」または「リクエスト1,000回に達するまで」のいずれか短い方 |
演奏会については、オーケストラのように出演者が多く報酬が高額になるため入場料を高く設定せざるを得ない場合や、楽器編成・舞台装置の制約で大規模な会場を使わざるを得ない場合など、合理的な理由があれば基準にかかわらず対象とできるとされています。
チケットを取って自主制作CDを売る、というごく普通の活動が、しっかり範囲内に収まる設計です。 かつての「1,000枚」から2,000枚への拡大は、自主制作を続けるアーティストにとって実質的な追い風と言えるでしょう。
届出の方法
自己利用の届出は、JASRACに著作権の管理を委託している方が行えます。メンバーズサイトにログインし、「その他の手続き」ページから使用日の前日までに手続きをします。
事後申請ではありません。ここが実務上いちばん事故が起きるポイントです。
なお、包括的利用許諾契約を締結しているUGCサービスであれば、自己利用制度を使わなくても投稿が可能です(音楽出版社との契約でインタラクティブ配信が管理除外されている作品を除く)。対象サービスはJASRACが一覧を公開していますので、ご確認ください。
NexTone管理作品の場合
NexToneも、自分で演奏した管理作品をCDに録音して販売・配布する場合、価格の有無にかかわらず利用申請が必要とされています。コンサート・イベントでの利用は開催5日前までに申請し、開催後5営業日以内に非管理作品を含む全利用作品の曲目報告を行う運用です。
「委任契約だから自由」ということではありません。ここは誤解しやすい点です。
TuneCoreで管理している場合は?
TuneCoreに期間譲渡している楽曲は、TuneCoreが著作権者の立場にあります。したがって自己利用の考え方も、JASRACの信託者向け制度そのままとは限りません。CD録音や自主イベントでの使用を予定されている場合は、利用前にTuneCoreへ個別にご確認ください。 これは規約解釈の領域であり、推測で進めるべきではありません。
第9章:Content IDの正体──原盤権と著作権は、別物です
YouTubeのContent IDについては、多くの解説が混同しています。当スタジオでも、ここで話が食い違うことが最も多い領域です。
整理すると、YouTubeで発生する権利は二層あります。
① 原盤権(レコーディングされた音源そのものの権利) TuneCoreの「YouTubeコンテンツ収益化サービス」は、原盤権利者が音源データをアップロードし、YouTube Content IDのデータベースに登録する仕組みです。誰かがその音源を使った動画を投稿すると、Content IDが検知し、「著作権の申し立て」が発生し、収益が原盤権者に還元されます。
これは著作権管理サービスとは別のサービスです。 ここが最初の混同ポイントです。
② 著作権(作詞・作曲された楽曲そのものの権利) こちらはJASRACやNexToneが管理し、JASRACはYouTubeを含む多数の動画投稿サービスと包括契約を結んでいます。さらにJASRACは2023年2月にYouTubeのContent IDを使用する契約を締結したことを公表しており、同年12月には外部のフィンガープリント事業者と契約して楽曲特定を強化することも発表しています。
つまり、Content IDの申立ては原盤権者からも著作権管理事業者からも起こり得ます。そしてその二つは、収益の流れも申立ての性質も異なります。
この構造を押さえると、よく聞く不安の正体が見えてきます。
- 自分の動画に広告がついてしまう……原盤権のContent ID登録が主な要因です。自チャンネルの取り扱い設定はTuneCore側で対応可能な場合があります
- 「弾いてみた」を投稿した友人の収益が止まった……原盤の音源を使っていれば原盤権の申立て。自演のカバーであれば著作権側の処理となり、JASRACからの申立てであっても動画の削除や異議申立ては通常不要です
- 「無料で使っていいよ」が通らない……システムは意図を読みません。個別の融通が利きにくいのは事実です
要するに、Content IDは「著作権を登録したから働き出す仕組み」ではなく、原盤と著作権それぞれの経路で並行して動いている検知網です。ここを分けて考えれば、無用な混乱はかなり減ります。
第10章:共同制作(コライト)の場合
友人やバンドメンバーと共作した場合、著作権は作詞・作曲に関わった全員に帰属します。
登録の前に、誰がどの割合で権利を持つかを必ず決めておいてください。これはレコーディングに入る前に済ませておくべき作業です。
- TuneCore……スプリット機能により著作権収益を自動で分配できます。ただし受け取る側もTuneCoreのアカウントを持っている必要があります
- JASRAC……分配明細つきで各権利者へ分配されます。演奏権使用料が信託者本人へ直接支払われる仕組みがある一方、実務上の取りまとめはご自身たちで行う場面が出てきます
- 自己利用……前述のとおり、他の権利者が反対している場合は無償利用が認められません。共作曲を自分のライブで使う場合も、合意が前提になります
割合の話は、作品が売れてから持ち出すと必ず角が立ちます。冷静に決められるのは、まだ誰も儲かっていないうちだけです。
第11章:TuneCoreで届出できない作品──「配信」と「著作権管理」を混同しないでください
ここは、当スタジオが実際のご相談から強く注意喚起したい章です。「配信リリースできること」と「著作権管理サービスに委託できること」は、まったく別の話です。 この二つを混同すると、思わぬところでつまずきます。
タイプビート・サンプリング・DAW付属ループは「配信はできるが、著作権管理は委託できない」
たとえば、BeatStarsなどで購入したタイプビートを使った楽曲、Splice等のサンプル音源を使った楽曲。TuneCoreの規約上、これらは「第三者の権利物」に区分されますが、配信リリース自体は可能です。登録時に商用利用が確認できる許諾証明(購入証明・ライセンス規約など)を添付すれば、審査を経て配信できます。ただし配信先ストアの条件やTuneCore・配信ストア側の審査結果によって、配信の可否が個別に判断される場合があることは留保しておいてください。
ところが、同じ楽曲を著作権管理サービスに委託しようとすると、対象外になる場合があります。TuneCoreが公式に挙げている例は「タイプビートを利用している場合」「第三者の著作物をサンプリングしている場合」で、ライセンス内容にもよるものの、ほとんどの場合はプロデューサー側・原著作物の権利者側が著作権の一部を保有しており、アカウント管理者が著作権の100%を管理できていないことが理由とされています。「ほとんどの場合」であって常にではない点は、公式の言い回しとして押さえておきたいところです。
当スタジオのお客様も、DAW付属のループ素材(GarageBand・Logic Pro等)を使用した楽曲についてTuneCoreへ著作権管理サービスの届出を試みたところ、対象外である旨の回答を受け取っていらっしゃいます。ただし、TuneCoreの公式ヘルプページにはDAW付属ループ素材を一律に委託対象外とする記載は見当たりません。このケースがタイプビート・サンプリングと同じ「著作権の100%を管理できていない」というロジックによるものなのか、それとも別の理由によるものなのかは公式に明言されていないため、断定は避けます。DAW付属ループ素材を使った楽曲の著作権管理サービス委託については、ライセンスの内容とあわせてTuneCoreへ個別にご確認いただくのが確実です。
配信できたからといって、著作権管理も委託できるとは限りません。 この二つの審査は別物であるとご理解ください。
パブリックドメインは「配信はできるが、そもそも著作権管理の対象にならない」
パブリックドメインの楽曲(保護期間が満了した作品)そのものであれば、権利者が存在しないため、配信自体に制約はなく許諾証明も不要です。ただし、これは「原曲そのもの」の話です。パブリックドメインの楽曲を第三者が編曲した音源や、第三者が録音した音源をそのまま使う場合は話が別で、その編曲・録音に対する権利(編曲者の著作権や実演家・レコード製作者の著作隣接権など)が別途発生していることがあり、配信登録時に許諾証明の添付を求められる場合があります。ご自身で一から編曲・演奏・録音した場合と、既存の第三者制作物を使う場合とを、区別して考えてください。
一方、著作権管理サービスへの届出はいずれの場合も対象外です。理由はタイプビート等とは異なり、原曲について、そもそも管理すべき著作権そのものが存在しないためです。委託を断られる理由が「権利の一部を他者が持っているから」なのか「権利そのものがないから」なのかは、似ているようで根本的に違う話ですので、区別しておいてください。
そのほか、著作権管理サービスの対象外となる作品
上記のほかにも、以下に該当する作品はTuneCoreの著作権管理サービスの対象外となります。
- すでにJASRAC・NexToneで管理されている作品……著作権の二重譲渡はできません。届出前にJ-WIDおよびNexToneの作品データベースで必ず確認してください
- 派生作品(バージョン違い・Remixなど)……1つの楽曲から派生した作品は、最初に届出したバージョンを管理している出版社で管理する必要があります。原則として派生作品の届出は受け付けられていません(著作者構成が異なる場合は可能なことがあります)
- 著作者の一部がサービスの利用や著作権譲渡に同意していない作品……共作の場合、参加著作者全員の同意がなければ著作権の100%を管理できず、届出は受け付けられません
- 環境音やスポークンワードなど、非音楽に該当する可能性のある作品……焚き火の音や川のせせらぎといった演奏を含まない環境音のみの録音物、ボイスドラマやASMRなどのスポークンワードは、著作権法上の「音楽」の範囲に属さない可能性があるため対象外です
- TuneCore Japanのサービス規約によりアカウント作成が認められない著作者を含む作品……たとえば海外在住の著作者はTuneCore Japanのアカウントを作成できないため、その著作者を含む作品は対象外です
- 著作権フリー音源として販売した作品……Audiostockなどのライセンス販売サービスに一度でも登録した作品は対象外とされています
- 生成AIで制作された音楽作品……著作権管理サービスの対象外です
生成AIの項目は、これから確実に相談が増える領域です。AI生成音楽の権利については当スタジオでも別途整理しておりますので、あわせてご覧ください。
なお、届出完了後に同一・類似作品が見つかると「権利競合」が発生し、TuneCoreの判断で管理対象外となる場合があります。通知が届いた際は2営業日以内の回答を求められますので、登録アドレスの管理にはご注意ください。
第12章:管理先を切り替えるとき
TuneCoreからJASRACやNexToneへ移行することは可能ですが、時間軸の設計が必要です。
- 譲渡期間の満了日を確認する……審査承認完了日から1年間です
- 満了の3ヶ月前までに管理停止を申請する……申請しなければ自動的に1年延長されます。違約金は発生しません
- 権利の回収を待つ……管理停止完了までには、著作権管理事業者側で数ヶ月を要する場合があります
- 新しい管理先へ登録する……JASRACなら信託契約と作品届、NexToneなら管理委託契約とPlayNでの登録です
ここで注意していただきたいのは、「今すぐ止める」ができないという点です。配信の停止のような即時性はありません。切り替えを考え始めた時点で、実際に移行が完了するのは1年以上先になる可能性を織り込んでおく必要があります。
だからこそ、最初にどこを選ぶかが重いのです。 気軽に試して気軽に戻れる仕組みではない、ということは強調しておきたいところです。
第13章:活動フェーズ別の目安
数字だけで線を引くのは本質的ではありませんが、判断の出発点としてご参考ください。
| 活動フェーズ | 検討したい選択 |
|---|---|
| 活動を始めたばかり・収益ほぼなし | 登録しない選択も十分に合理的 |
| 自分の曲を自分で配信・演奏している | TuneCore(第三者利用実績が不要な唯一の選択肢) |
| 国内の再生数・BGM利用が伸びてきた | TuneCore著作権管理を本格導入 |
| 他アーティストへの楽曲提供、タイアップが発生 | JASRAC・NexToneの要件を満たす可能性が高い。移行を検討 |
| 海外リスナーが一定割合いる | JASRACまたはNexToneへ。TuneCoreでは取りこぼします |
| 曲ごとに管理を分けたい | NexTone(任意の楽曲のみ登録) |
| 権利の一部だけ自分で持ちたい | JASRACの管理委託範囲の選択、または両者の併用 |
| 無断利用への法的対応を重視 | JASRAC(著作権者として法的措置を取りやすいとされる) |
前バージョンの本記事では「収益が数十万円規模になればJASRACの初期費用のほうが割安」という趣旨の記述をしておりましたが、JASRACの初期費用が無料化されている現在、この比較は成立しません。 お読みいただいた方には、この場でお詫びして訂正いたします。
判断軸は費用ではなく、第三者利用実績があるか、海外収益があるか、曲単位で選びたいか、そして権利侵害に誰が戦うかです。
第14章:現場からの実感
CD制作をお預かりする際、当スタジオではJASRACへの申請代行も承っています。その現場で繰り返し立ち会う場面をいくつか記しておきます。
「1,000枚までは無料ですよね」という確認。 これは本当に多い。悪意も油断もなく、皆さん親切な先輩や信頼できるブログから学んでいらっしゃる。ただ制度は静かに動いていて、いまは2,000枚です。情報が古いことを恥じる必要はまったくありませんが、「一次情報を一度は自分の目で見る」という習慣だけは、権利の話に関しては持っておいてほしいと申し上げています。
プレス直前に自己利用の届出を思い出す。 届出は使用日の前日までです。マスターが完成し、盤面デザインも上がり、あとは工場へ──という段階で気づくと、進行に無用な緊張が走ります。当スタジオでは、レコーディングの初回打ち合わせの段階で権利関係のスケジュールを一緒に引くようにしています。音を作る工程と権利を整える工程は、並行して走らせるべきものです。
「入金がない」という不安。 登録したのに残高が動かない、というご相談を受けることがあります。多くは単にタイムラグです。JASRACの分配は年4回で、6月の分配が反映しているのは前年10月から3月の利用分。半年前に鳴った音の対価が、いま届いている。 そう理解できていれば、待つことは苦になりません。仕組みを知らないままだと、ただ不安なだけの半年になってしまいます。
海外の再生数だけが伸びていく。 ヨーロッパのイージーリスニングのランキングに入ったのに、著作権収益が思ったより少ない──というご相談を受けたことがあります。原盤の販売収益は入っている。けれど著作権収益は国内分だけ。ご本人はまったく気づいていらっしゃいませんでした。取りこぼしは、痛みを伴わないから気づけない。 これが著作権管理のもっとも厄介な性質だと思っています。
分配の割合を決めずにレコーディングに入る。 これはもう、何度でも申し上げます。「あとで決めよう」と言ったまま進んだ案件が、リリース後にトラブルになったことがありました。音が良いほど、聴かれるほど、あとから揉める余地は大きくなります。 作品を長生きさせたいのであれば、最初に決めてください。
まとめ:制度は変わる、審美眼は残る
ここまで、数字と規約の話を積み重ねてまいりました。最後に、当スタジオの立場を申し上げます。
著作権管理の選択に、唯一の正解はありません。あるのは「あなたの活動の形に、どの器が合うか」という問いだけです。
- まだ第三者にあなたの曲が使われていない段階では、TuneCoreが実質的に唯一の入口です。15%はその通行料と考えるのが妥当でしょう
- 曲ごとに手綱を握り分けたい方には、NexToneの柔軟さが効きます
- 海外に届き始めた方、無断利用に備えたい方には、JASRACの広い網と法的な後ろ盾が必要になります
- そして、まだ誰もあなたの曲を使っていない段階であれば、何も登録しないという静けさにも、確かな合理性があります
ただ、ひとつだけ譲れないことがあります。
制度は、あなたが気づかないうちに変わります。 27,500円は無料になり、1,000枚は2,000枚になり、法人限定だった団体は個人に門を開きました。この記事も、また古くなるでしょう。
だからこそ、当スタジオが大切にしたいのは、個別の数字を暗記することではなく、「自分の作品の行き先を、自分で把握しておく」という姿勢そのものです。
マスタリングで0.1dBを詰めるとき、私たちは「なぜその音が必要なのか」を必ず言葉にします。理由のない処理は、いずれ作品を鈍らせるからです。権利の扱いも同じことだと考えています。誰かが勧めたから登録するのではなく、自分の活動の形を見つめた上で選ぶ。その一手間が、五年後、十年後の作品の立ち姿を決めていきます。
音は空気の震えにすぎません。それを作品として世に立たせ、正しく巡らせるための骨格が、著作権という仕組みです。美しい音を作ることと、その音を正しく守ることは、同じ仕事の裏表に他なりません。
ご相談はスタジオまで
著作権管理は、活動スタイルや収益状況、そして「これから何をしたいか」によって最適な選択が変わります。「自分はどうすればいいのか」と迷われたときは、お気軽にスタジオスタッフへご相談ください。一緒に考えます。
なお、当スタジオではCD制作時のJASRACへの申請代行も承っております。自主制作盤の制作をご予定の方は、ぜひお早めにお声がけください。権利のスケジュールは、音作りのスケジュールと同時に引くのがもっとも安全です。
出典・参考
本記事の記述は、以下の一次情報および公式発表をもとにしています(特記のない項目は2026年7月31日時点、TuneCore Japanの2項目は2026年9月10日時点で確認)。
JASRAC
- JASRACに著作権の管理を任せるには(管理委託範囲の選択、第三者利用実績の要件) https://www.jasrac.or.jp/creators/contract/
- ご自身の作品を自ら利用する場合について(自己利用の条件・規模の上限・届出方法) https://www.jasrac.or.jp/creators/self-use/
- JASRACが選ばれる理由(分配は年4回・分配明細) https://www.jasrac.or.jp/creators/choice/
- JASRACの分配のしくみ/使用料が届くまで(分配期・外国団体からの送金) https://www.jasrac.or.jp/aboutus/distribution/
- JASRACのメンバーシップについて(信託者・準会員・正会員) https://www.jasrac.or.jp/creators/memberships/
- よくあるご質問(権利者の皆さま)/契約の費用、手数料 https://secure.okbiz.jp/faq-jasrac/category/show/209?site_domain=jp
- 作詞家・作曲家・音楽出版社の窓口(JASRAC PARK・信託契約の条件) https://www.jasrac.or.jp/park/work/work_3.html
- 2025年12月分配期における著作物使用料の分配実績(対象期間・外国団体数) https://www.jasrac.or.jp/information/release/25/251222.html
- 信託契約申込金の無料化に関する報道(Musicman・2020年) https://www.musicman.co.jp/business/330726
TuneCore Japan
- 著作権管理サービス(手数料・管理地域) https://www.tunecore.co.jp/features/publishing
- 著作権管理サービスとは?(期間譲渡・1年自動更新) https://support.tunecore.co.jp/hc/ja/articles/4414637686937-
- 【著作権管理サービス】サービスについて(管理停止・権利競合) https://support.tunecore.co.jp/hc/ja/articles/9160300735001-
- 【著作権管理サービス】収益について(反映タイミング・引き出し) https://support.tunecore.co.jp/hc/ja/articles/9161290480537-
- 【著作権管理サービス】届出申請できない作品は? https://support.tunecore.co.jp/hc/ja/articles/4712543840537-
- 【YouTube コンテンツ収益化サービス】どんなサービス? https://support.tunecore.co.jp/hc/ja/articles/360007011092-
- タイプビートを使用した音源はリリースできますか?(2026年9月10日確認) https://support.tunecore.co.jp/hc/ja/articles/4402543886861-
- 楽曲情報の第三者の権利物情報とは?(2026年9月10日確認) https://support.tunecore.co.jp/hc/ja/articles/4916761919385-
NexTone
- 著作権管理サービス FAQ(費用・管理地域・利用申請) https://www.nex-tone.co.jp/copyright/faq.html
- 管理委託契約のお手続き(作品届の提出期限と分配期) https://www.nex-tone.co.jp/copyright/creators/corporation.html
- NexToneって個人でも契約できるの?(個人契約の条件・公表実績の条件) https://note.com/nextone_corp/n/nc154c3f4e78c
改訂履歴
2026-09-10|部分改訂
修正・追加した点
- 第11章「TuneCoreで届出できない作品」を、配信リリースの可否と著作権管理サービスの委託可否を分けて整理する構成に改稿
- タイプビート・サンプリング・DAW付属ループ素材(GarageBand・Logic Pro等)を使用した楽曲は、許諾証明を添付すれば配信は可能である一方、著作権の100%を管理できないため著作権管理サービスへの委託はできない点を明記
- パブリックドメイン楽曲は配信は可能だが、管理すべき著作権自体が存在しないため著作権管理サービスの対象にはならない点を明記
- 著作権管理サービスの対象外となる作品の一覧に、「著作者の一部が同意していない作品」「環境音・スポークンワードなど非音楽に該当する作品」「海外在住の著作者を含む作品」を追加
- ファクトチェックにより、DAW付属ループ素材を一律に委託対象外とする断定、パブリックドメインの編曲・録音物についての許諾不要という断定、許諾証明添付で配信を確約する表現をそれぞれ修正
- 同じくファクトチェックにより、以下の既存記述(2026-07-31版から)も修正:自己利用複製上限「2,000」への改定時期を「2025年10月」と断定していた記述(公式の告知時期が確認できないため削除)、JASRAC・NexToneの訴権比較の断定的表現(一般的な法解釈である旨に弱める)、NexToneの他事業者併用条件を「13区分の重複回避」と断定していた記述(該当する一次情報が確認できないため一般化)
2026-07-31|全面改訂
修正した点
- JASRAC信託契約申込金を「約27,500円」から無料(2020年に撤廃済み)に訂正
- 申込手続きを「書類郵送・実印・印鑑証明」からオンライン申込可に訂正
- 自主制作CDの自己利用上限を「1,000枚」から複製数2,000(2025年10月拡大)に訂正
- YouTube Content IDの説明を原盤権と著作権に分離
- TuneCoreの位置づけを「窓口代行」から「著作権の期間譲渡」に訂正
- 「TuneCoreはJASRACとNexToneの両方と提携」という断定を削除
- まとめの費用比較ロジックを全面差し替え
追加した点
- よくある三つの誤解
- 三者の開始条件(第三者利用実績はJASRAC・NexTone双方に必要、TuneCoreは不要)
- JASRACとNexToneの選び分け(管理単位・訴権・併用)
- 海外収益の観点(国内限定はTuneCoreのみ)
- 収益の反映タイミングと分配のタイムラグ
- 自己利用の現行規模上限(400万円・2,000・3か月/1,000回)
- NexTone管理作品の自己利用の扱い
- TuneCoreで届出できない作品
- 「JASRACの申請は面倒」という評判の現況(オンライン申込へ整備済み)
- 出典一覧・改訂履歴
構成の変更
- JASRACとNexToneの詳細比較は専用記事へ分割し、本記事からは要点と内部リンクで案内する形に変更
2026-05-02|初版公開


