MENU

【お知らせ】MULTI AUDIO CHECKER V3.0 公開 ── ミックスモード/試聴モードなど7つのアップデート

multi-audio-checker01

RED IGUANA STUDIOが無料で公開しているブラウザ完結型のマルチトラック音源チェッカー「MULTI AUDIO CHECKER」が、V3.0へとアップデートいたしました。今回のアップデートでは、複数の楽曲ファイルを1曲ずつ切り替えながら集中して聴き比べるための新モード「試聴モード」の追加をはじめ、ソロ・ミュートの優先関係の見直しや波形表示の強化など、あわせて7つの変更が加わっています。本記事では、これからMULTI AUDIO CHECKERをお使いいただく方に向けてツールの概要をお伝えしたうえで、V3.0の新機能を中心にご紹介いたします。

目次

MULTI AUDIO CHECKERとは

MULTI AUDIO CHECKERは、音声ファイルをまとめてドラッグ&ドロップするだけで、フォーマット・サンプルレート・ビット深度・チャンネル数・ビットレート・尺を自動解析し、一覧表示できる無料のWebツールです。以前の記事でもご紹介した通り、パラデータ(マルチトラックのステム納品)を受け取った際、DAWを開く前に各ファイルの設定が揃っているかを確認しておくことは、後々の手戻りを防ぐうえで欠かせない工程と言えるでしょう。設定が多数派と異なるファイルは自動でハイライトされるため、数十本規模のステムであっても不整合を見落としにくくなっています。

  • 対応フォーマット:WAV / AIFF / FLAC / MP3 / その他(M4A・AAC・OGGなど、推定値)
  • 主な機能:一覧解析とハイライト、波形表示、全トラック同時再生(ミュート・ソロ・音量調整)、クリッピング(音割れ)検出
  • 料金:無料(商用利用可)
  • 処理方式:すべてブラウザ内で完結し、ファイルはサーバーへアップロードされません

もともとはパラデータの検品を主な用途として開発されたツールですが、納品前の最終チェックや、サンプル・ループ素材ライブラリの検品、動画用音声素材のフォーマット確認など、現場では幅広い場面で活用されています。

V3.0アップデート内容まとめ

今回のアップデートで加わった変更点は、以下の7点です。

  1. ミックスモード/試聴モードの切り替えを追加
  2. ソロとミュートの優先関係を見直し
  3. 全トラックを一括調整できる「全体音量」フェーダーを追加
  4. 波形に時間グリッドを追加
  5. チャンネルを分けて波形表示できるトグルを追加
  6. 再生バーの配置を変更
  7. ヘッダーに「出力クロック」表示を追加

以下、それぞれの内容を詳しくご紹介いたします。

1. ミックスモード/試聴モードの切り替え

今回のアップデートで最も大きな変更点が、この「ミックスモード/試聴モード」の切り替え機能です。

これまでのMULTI AUDIO CHECKERは、複数のトラックを同じ曲のパラ(レイヤー)として重ねて聴く、いわば「ミックスモード」の動作を前提に設計されていました。ソロは複数トラックを同時に選択でき、解除すれば元の全体ミックスに戻るという仕組みです。

一方で、現場ではこれとは性質の異なる比較作業も発生します。たとえば、複数の楽曲ファイルをまとめて受け取り、その中から1曲を選定したり、楽曲同士の音の違いを聴き比べたりする場面です。こうした「楽曲そのものを比較する」用途に、これまでのミックスモードを使うと思わぬ壁にぶつかっていました。複数の楽曲ファイルを同じタイムライン上に並べてミックスモードで再生すると、あるトラックのソロを解除した瞬間、他のすべてのファイルが一斉に鳴り出してしまうのです。1曲だけに集中して聴きたいのに、常に他の楽曲の音が混ざり込んでしまい、落ち着いて比較することができません。

新たに加わった「試聴モード」は、この課題に対応するための専用モードです。試聴モードではソロが常に1つだけしか選択できない方式になり、あるトラックのソロを押すと他のトラックのソロは自動的に解除されます。誰もソロしていない状態は無音になり、ミックスモードのように全部が同時に鳴ることはありません。1曲を切り替えながら聴く操作だけで、他の楽曲の音に邪魔されずに聴き比べを続けられます。ミュートボタンはこのモードでは意味を持たないため、非表示になります。

  • ミックスモード(従来通り):複数トラックが同じ曲のパラである前提。ソロは複数選択可
  • 試聴モード(新機能):読み込んだファイルが独立した候補である前提。ソロは常に1つだけ

モードを切り替えると、その都度ソロ・ミュートの状態はリセットされます。ミックスモードから試聴モードへ切り替えた直後は、一覧の一番上のトラックが自動的にソロされた状態になり、試聴モードでソロ中のトラックを削除した場合は、次のトラックへ自動的にソロが移る仕様です。1つのツールの中に、性質の異なる2つの「聴き比べ」を両立させた点にこそ、今回のアップデートの核心があります。

2. ソロ・ミュートの優先関係を見直し

これまでのMULTI AUDIO CHECKERでは、あるトラックをミュートした状態でソロを押しても、ミュートが優先されてそのトラック自身の音は鳴らない仕様になっていました。V3.0では、この優先関係を「ソロがミュートより優先される」形に見直し、ミュート中のトラックでもソロを入れればそのトラック自身が聴こえるように変更しています。

DAWでの作業に慣れたエンジニアほど、ソロとミュートの優先関係は無意識のうちに手が覚えているものです。日頃の作業感覚と異なる挙動のツールは、確認作業のはずが逆に思考の負荷を生みかねません。細部ではありますが、現場で使う道具の挙動を、より直感に沿った形へ整えておくこと。この地味な修正にこそ、実務上の意味は決して小さくないはずです。

3. 「全体音量」フェーダーの追加

一覧上部に、全トラックの出力を一括で調整できる「全体音量」スライダーが新たに加わりました。基準は0dB、調整範囲は-60dB〜+12dBです。

多数のトラックを同時再生すると、個々のトラックでは適正な音量であっても、合算した出力がクリップして音割れしやすくなります。これまでは各トラック個別のフェーダーしか用意されていなかったため、多トラックのパラデータを一気に読み込んだ際、出力全体を素早く下げる手段がありませんでした。全体音量フェーダーは、こうした場面で出力全体を一括で下げたい、あるいは逆に元々小さめのセッションを底上げしたい、といった要望に応えるための機能です。個別トラックのフェーダーとは独立して動作するため、トラックごとのバランスを崩さずに全体の音量だけを調整できます。

4. 波形への時間グリッド表示

波形上に、薄い縦のグリッド線が表示されるようになりました。この間隔は固定ではなく、表示幅に対して線が詰まりすぎない間隔(5秒〜1時間の範囲)が自動的に選ばれる仕組みです。短いファイルでは細かく、長尺ファイルでは粗く、常に読みやすい間隔になるよう設計されています。

あわせて、下部のシークバー側にも同じ間隔で時間ラベル(0:30、1:00…)が表示され、波形側とシークバー側の目盛りが必ず一致するようになりました。波形上のどのあたりで何が起きているかを、感覚だけでなく時間軸の数値と突き合わせながら確認できるようになった点は、地味ながら実用的な改善です。

5. チャンネルを分けて表示するトグル

一覧上部の「チャンネルを分けて表示」チェックボックスをオンにすると、ステレオ以上のファイルの波形が、チャンネルごとに上下へ分割して表示されるようになりました(モノラルファイルは変化ありません)。

通常は全チャンネルを合成した1本の波形で表示されます。これは、左右で音量差が極端な音源であっても、合成された波形が無音のように見えてしまうことを防ぐための仕様です。一方で、左右チャンネルの波形そのものを個別に見比べたい場面もあるため、今回のトグルによって、状況に応じてどちらの表示方法も選べるようになりました。なお、この切り替えはあくまで波形表示の見え方を変えるものであり、再生される音そのものが左右チャンネルごとに分かれて聴こえるわけではない点にはご留意ください。切り替えは一覧全体に対して一括で行われ、トラックごとに個別設定することはできません。

6. 再生バーの配置変更

画面上部の再生ボタン(▶)とシークバーの位置が、ツールバーの設定項目群の下へと移動しました。従来は設定項目と再生操作が並んで配置されていましたが、V3.0では設定項目を上段、再生操作を下段に統一する形にレイアウトが整理されています。

視覚的な変更にとどまる項目ですが、「まず設定を整えてから再生する」という作業の流れに沿った並びになったことで、初めてツールに触れる方でも迷いにくいレイアウトへと整理されました。

7. 「出力クロック」表示の追加

画面上部のヘッダー部分に、「出力クロック」という表示が新たに加わりました。ファイルを1件も読み込んでいない状態でも常に表示されます。

一覧表に表示されるサンプルレートは、あくまでファイルのヘッダーに記録された正確な値です。一方で、実際にブラウザ上で再生される音は、ブラウザのAudioContextが動作しているクロック(PCやオーディオインターフェイスの出力設定に依存し、44.1kHzまたは48kHzが多く、インターフェイスによっては96kHzなどの場合もあります)へリアルタイムでリサンプリングされています。つまり、一覧表の数値上のサンプルレートと、実際に耳で聴いている音のクロックが一致しない場合があるということです。

「出力クロック」欄は、この「実際に鳴っている音のクロック」を確認するための表示です。ページを読み込んだ時点の値で固定されるため、あとからオーディオデバイス側のサンプルレート設定を変更した場合は、ページの再読み込みが必要になります。普段は意識することの少ない部分ですが、複数の異なるサンプルレートの素材を1つの環境で聴き比べる際には、地味に重要な情報と言えるでしょう。

こんな方におすすめです

  • クライアントやバンドから受け取ったパラデータを、DAWを開く前に一括で検品したい方
  • 複数の楽曲ファイルが届いた際に、1曲ずつ集中して聴き比べながら選定したい方
  • サンプルレート・ビットレート・ファイル形式が異なる音源同士でも、同じ画面上で読み込んで比較したい方
  • 多数のトラックを同時再生した際の音割れを避けつつ、全体のバランスを確認したい方
  • 尺の長い音源を扱う際、波形上の位置関係を時間軸で正確に把握したい方
  • ステレオ音源の左右チャンネルの波形を、個別に見比べて確認したい方

とりわけ試聴モードは、「重ねて聴くパラ」と「聴き比べて選ぶ独立した候補」という異なる性質のファイルを、同じツールの中で適切に扱い分けられるようにした機能です。複数の楽曲ファイルを受け取って選定する場面はもちろん、AIによる楽曲生成が身近になった制作環境においても、その用途は広がっていくはずです。用途に応じてモードを選べる柔軟性こそ、今後の制作現場でますます求められていく価値ではないでしょうか。

また、MULTI AUDIO CHECKERは各トラックの解析を個別に行うため、サンプルレートやビット深度、ファイル形式が異なる音源同士であっても、同じ画面に読み込んで同時に再生することができます。全トラックのシークバーが同じ時間軸に揃う仕組みのため、規格の異なる素材同士でも、タイムラインをずらすことなく聴き比べが可能です。

ご利用にあたっての注意点

  • 推奨環境:Chrome / Edge / Firefox / Safariの最新版で動作確認済みです。すべての処理はブラウザ内で完結し、ファイルがサーバーへアップロードされることはありません
  • 画面幅について:スマートフォンなど画面幅が狭い端末には対応しておらず、レイアウトが崩れる場合があります。iPadの横向きなど、ある程度の画面幅があるタブレットまたはPCでのご利用を推奨いたします
  • フォーマットごとの精度差:WAV・AIFF(PCM相当)・FLAC・MP3はファイルを自前で解析するため、どのブラウザでも同じ精度で値を取得できます。一方でM4A・AAC・OGGなど「その他」扱いのフォーマットはブラウザ標準のデコーダーに依存するため、対応状況がブラウザによって異なる場合があります(例:SafariはOGGの再生・波形表示に対応していない場合があります)
  • 再生・シークについて:あくまで「おおよそのイメージ確認」を目的とした機能であり、DAWでの正確な位置合わせの代わりにはなりません
  • クリッピング検出について:あくまで簡易的な自動検出であり、意図的なリミッティングやサチュレーション処理との区別はつかない点にご留意ください
  • 出力クロック表示について:ページを読み込んだ時点の値で固定表示されます。オーディオデバイス側のサンプルレート設定をあとから変更した場合は、ページを再読み込みしないと表示が更新されません

よくあるご質問

Q. V3.0へのアップデートに追加料金はかかりますか? A. いいえ、これまでどおり無料でご利用いただけます。商用利用も可能です。

Q. 試聴モードとミックスモードは、後からいつでも切り替えられますか? A. 一覧左上のトグルから、いつでも自由に切り替えていただけます。ただし切り替えるたびにソロ・ミュートの状態はリセットされますので、その点はあらかじめご了承ください。

Q. 全体音量フェーダーを使うと、書き出したファイル自体の音量も変わりますか? A. 変わりません。全体音量フェーダーはブラウザ上での再生確認用の調整にとどまり、読み込んだファイル自体を編集・上書きするものではないためです。

Q. これまでのバージョンでできていたことは、V3.0でもそのまま使えますか? A. 一覧解析・ハイライト表示・波形表示・クリッピング検出といった既存機能は、これまでどおりすべてご利用いただけます。

他のツールもあわせてご活用ください

RED IGUANA STUDIOでは、MULTI AUDIO CHECKER以外にも、音楽制作の現場で役立つ無料ツールを複数公開しています。

  • VIZ WAVE:音声ファイルを読み込むだけでリアルタイムに反応するグラフィックスを生成し、動画として書き出せるオーディオビジュアライザーです。楽曲のリリースに合わせたリリックビデオや、SNS向けのショート動画制作などに活用いただけます。
  • POST WAVE:VIZ WAVEで書き出したWebM形式の動画を、より汎用性の高いMP4形式へ変換するツールです。
  • ASPECT RATIO CHANGER:1枚の画像を配信先ごとに求められるアスペクト比へ一括変換するツールです。
  • STUDIO TEMPO TOOL:BPMの計測とディレイタイムの計算を担うツールです。
  • STUDIO TONE GENERATOR:基準となるテストトーンやノイズを生成するツールです。

いずれも制作工程に潜む細やかな手間を軽減するために開発したツール群です。ご興味をお持ちの方は、ツール一覧ページもあわせてご覧いただければ幸いです。

結びに

音を確認するという行為は、本来もっとも人の耳と集中力が発揮されるべき瞬間の、いわば下準備にすぎません。だからこそ、その下準備にかかる手間はできるだけ軽く、そして正確であってほしいと私たちは考えています。今回のV3.0で加わった試聴モードや音量調整、波形表示の強化は、派手な機能を増やすためのものではなく、耳を澄ませる前の「見る」作業を、より的確な判断材料に変えるための調整にほかなりません。道具が静かに正確であるほど、その先にある制作の時間はより豊かなものになる。私たちはそう信じて、これからも一つひとつの機能を丁寧に磨いてまいります。


当スタジオでは、レコーディングからミックス・マスタリングまでトータルでサポートいたします。 質の高い制作環境を保つため「完全予約制」のプライベート空間となっておりますので、周りを気にせずご自身のペースで集中して制作していただけます。

営業時間: 火〜日 10:00 〜 19:00(月曜定休)
[ 制作のご依頼・ご相談窓口【無料】]

multi-audio-checker01

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次