本記事は2026年7月時点の情報をもとに執筆しています。プラットフォームとの契約状況は随時更新されるため、実際の投稿前には各公式サイトの最新情報をご確認ください。記事末尾に出典一覧と改訂履歴を掲載しています。
2026年4月、ちょっとした騒ぎがありました。
JASRACの公式Xアカウントが「Xでの投稿は、YouTubeやInstagram、TikTokなどとは異なり、当協会との許諾契約の対象外です」と発言したのです。長年、歌ってみた・弾いてみた動画をXに投稿していた人たちの多くが「え、今まで普通に上げてたけどダメだったの?」と驚き、慌てて動画を削除する人が続出しました。
この記事は、その戸惑いに答えるために書きました。「この曲は、いったい誰の管理下にあるのか」を、自分で調べる方法です。
当スタジオではこれまで、著作権を「預ける側」——つまりアーティスト自身の視点で記事を書いてきました(TuneCore・JASRAC・NexToneの選び方、NexToneとJASRACの違い)。今回は逆の視点、「曲を使う側」に立ちます。
第1章:そもそも、なぜYouTubeは平気で、Xはダメなのか
答えは単純です。プラットフォームが管理団体と契約しているかどうか、それだけです。
YouTube、TikTok、Instagram、ニコニコ動画といった大手プラットフォームの多くは、JASRACおよびNexToneと包括的利用許諾契約を結んでいます。この契約があると、プラットフォーム側がまとめて使用料を支払うため、投稿者ひとりひとりが個別に許諾を取る必要がありません。 自分で歌った・演奏した動画を投稿する分には、何もしなくていいのです。
一方、Xはこの包括契約を結んでいません。 そのため、JASRACやNexToneが管理する楽曲の歌ってみた・演奏してみた動画をXに直接投稿する場合、投稿者自身が個別に申請し、許諾を得る必要があります。
なお、Meta社の新SNS「Threads」は、JASRAC・NexTone双方との契約が確認できています(NexToneは2026年6月25日更新の一覧で確認)。プラットフォームごとの契約状況は今後も変わっていくため、「知っている情報」を過信せず、都度確認する習慣が大切です。
主要サービスの契約状況(2026年7月時点)
| サービス | JASRAC | NexTone |
|---|---|---|
| YouTube | 契約済み | 契約済み |
| TikTok | 契約済み | 契約済み |
| 契約済み | 契約済み | |
| 契約済み | 契約済み | |
| ニコニコ動画 | 契約済み | 契約済み |
| Threads | 契約済み | 契約済み(2026年6月25日時点の一覧で確認) |
| Twitch | 未確認 | 契約済み |
| ツイキャス/SHOWROOM | ― | 契約済み |
| X(旧Twitter) | 未契約 | 未契約 |
最新の一覧は、JASRACなら「利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧」、NexToneなら「NexToneと利用契約を締結している動画配信サービス(一覧)」として、それぞれ公式サイトで公開されています。投稿前に一度、直接確認するのが確実です。
第2章:「自分で調べる」が必要になるのは、こんな時
包括契約のあるプラットフォームなら、そもそも調べる必要すらありません。調べる必要が出てくるのは、次のような場面です。
- Xに歌ってみた・演奏してみた動画を投稿したい
- 自主制作CDに収録したい曲が、JASRAC管理かNexTone管理か分からない
- 収益化を伴う形で、動画を外部サイトに埋め込みたい
- コンサート・イベントで使う曲の管理状況を確認したい
- 「この曲、CDに使っていいのか」を出版・広告の担当者に聞かれた
こういう場面で頼りになるのが、**JASRACが運営する「J-WID(ジェイウィッド)」**と、NexToneが運営する「作品検索データベース」です。J-WIDは「Works Information Database」の略で、要はJASRAC版の検索エンジンだと思ってください。どちらも無料・登録不要で、誰でも使えます。
第3章:JASRACのJ-WIDで「出てこない」を解決する
JASRACの管理楽曲かどうかは、作品データベース検索サービス「J-WID」で確認できます。ですが、検索してもヒットしないという声は非常に多く聞かれます。
原因は、J-WID特有の表記ルールにあります。JASRAC公式のFAQには、次のような対処法が明記されています。
出てこない時に試すべきこと
① 全角カタカナで、発音通りに検索する
たとえば「彼方へ」は「カナタエ」、「愛を」は「アイオ」というように、漢字や平仮名ではなく、発音をカタカナに変換して検索するのが基本ルールです。曲名をそのまま漢字仮名交じりで打っても、ヒットしないことがあります。
② 作品タイトルに加えて、作詞者名か作曲者名で絞り込む
タイトルだけでは同名異曲がヒットしてしまう、あるいは表記ゆれで漏れてしまうことがあります。タイトルと、作詞者名または作曲者名の2条件で検索すると、精度が上がります。
③ 冠詞の位置に注意する
英数記号のみの外国語タイトルで冠詞(THE等)から始まる場合、J-WID上では冠詞が末尾に表示されます。「THE END」は「END THE」として登録されている、という具合です。
④ それでも出てこない場合
J-WIDは、著作者・出版者からの届出や、利用実績のある作品をもとに作られています。利用実績や届出がない作品は、そもそも掲載されていない場合があります。 この場合はJASRAC管理ではない可能性が高く、次に紹介するNexToneの検索、あるいは直接権利者への確認が必要になります。
第4章:NexTone作品検索データベースの使い方
NexToneも同様に、無料の作品検索データベースを公開しています。
使い方はシンプルです。公式サイトの「作品検索データベース」から、曲名やアーティスト名を入力します。完全一致でなくても、部分一致で検索が可能です。該当する楽曲が一覧表示され、詳細画面では「管理区分」——演奏・録音・インタラクティブ配信など、どの権利をNexToneが管理しているか——を確認できます。
ここで重要なのは、「管理区分ごとに◯×が分かれている」という点です。 ある曲の「配信」区分はNexTone管理でも、「演奏」区分は管理していない、ということが普通に起こります。使いたい用途に対応する区分が「◯」になっているかを、必ず確認してください。
検索してもヒットしない場合、その曲はNexTone管理ではない可能性が高いです。その場合は、J-WIDでの確認、または権利者(音楽出版社等)への直接の問い合わせに進むことになります。
第5章:「調べる」と「申請する」は、別のシステムです
ここが、いちばん混同されやすいポイントです。曲の管理状況を調べるサービスと、実際に利用許諾を申請するサービスは、別物です。
| 目的 | JASRAC | NexTone |
|---|---|---|
| 管理状況を調べる(無料・登録不要) | J-WID | 作品検索データベース |
| 実際に申請する(要登録) | J-TAKT | PlayN |
J-TAKTは、JASRACが提供するインターネット関連の手続き専用窓口です。商用配信・非商用配信いずれの申請もここから行い、24時間いつでも手続きができます。Xへの投稿で個別許諾が必要になった場合も、この窓口から申請することになります。
非商用配信(個人が営利目的でなく行う配信)の場合、J-WIDで権利関係を確認したうえでJ-TAKTにログインし、利用曲目を報告する、という流れになります。情報料や広告料等の収入がない場合は、この非商用配信の枠組みが適用されます。
NexToneの場合は、作品検索データベースで管理区分を確認したのち、PlayN(クリアランスシステム)から利用申請を行います。承認されると、許諾マーク・許諾番号が発行されます。
第6章:実際に、Xへの個別許諾を取ってみる
ここまで抽象的な説明が続いたので、**NexToneが公開している「個人によるXへの投稿に関する申請・報告マニュアル」**をもとに、実際の手順を追ってみます。個人が収益を得ずにXへ投稿する場合の流れです。
- PlayN(
https://playn.nex-tone.co.jp/)にログインし、インタラクティブ配信メニューの「利用許諾申請」を開く - 「Xでの利用許諾申請」を選択する
- 楽曲を利用するXアカウントのURLと、投稿を開始した日付を記入する(終了日が未定なら空欄でよい)
- 「個人で収益を得ずに行う楽曲利用である」ことを確認しチェックを入れ、申請を確定する
- 申請から5営業日以内を目途に、許諾番号がメールで届く
許諾を得たあとも、作業は終わりではありません。四半期ごとに利用実績の報告が必要です(1〜3月分は4月に、4〜6月分は7月に、というように翌月報告)。報告対象になるのは、投稿した楽曲のうちNexTone管理楽曲のみ。楽曲を使った投稿を削除するまでは、翌月以降も報告対象になり続ける点には注意してください。
個人・非商用・Xという、まさにこの記事の読者が置かれているであろう状況にぴったり合ったガイドが、すでに公式から出ています。 Xへの投稿で個別許諾が必要になった場合は、まずこのマニュアルに沿って進めるのが最短です。
なお、JASRAC側でも同様に、J-TAKTからの非商用配信の手続きとして進めることになりますが、Xの個人投稿に特化した専用マニュアルまでは、2026年7月時点で確認できていません。J-WIDでの権利確認後、J-TAKTの非商用配信フローに沿って手続きすることになります。
第7章:許諾番号は、いつでも必要なわけではありません
申請が通ると「許諾マーク」と「許諾番号」が発行されますが、表示が必要な範囲は用途によって異なります。
| 用途 | 許諾マーク | 許諾番号 |
|---|---|---|
| CD・DVD等の録音物 | 表示が必要 | 表示不要 |
| インタラクティブ配信 | 表示が必要 | 表示が必要 |
CDやDVDへの録音の場合、盤面かケース・パッケージのいずれか一箇所に許諾マークを表示すれば足り、許諾番号までは表示しなくてよいとされています。一方、インタラクティブ配信では、マークと番号の両方の記載が求められます。
「許諾番号が分からないから投稿できない」と悩む前に、そもそも自分の用途で番号の表示が必要なのかどうかを確認する価値があります。
第8章:見つからない曲は、どうすればいいか
J-WIDでもNexToneの作品検索データベースでも見つからない場合、考えられる可能性は主に3つです。
① 著作権者が自分で権利を管理している(自己管理)
JASRACにもNexToneにも著作権を委託していないケースです。この場合、利用の可否は著作権者本人、あるいは所属する音楽出版社に直接確認する必要があります。
② 利用実績や届出がまだない
J-WIDは利用実績や届出をもとに作られるデータベースです。リリースされたばかりの曲や、まだ広く使われていない曲は、管理団体に委託されていても掲載が追いついていない場合があります。
③ 表記ゆれで検索に引っかかっていない
第3章で紹介したカタカナ検索・2条件検索を、まだ試していない可能性があります。もう一度、条件を変えて検索し直してみてください。
いずれの場合も、「見つからない=自由に使ってよい」ではありません。 権利者不明のまま使用すれば、後から著作権侵害を指摘されるリスクが残ります。判断に迷う場合は、プラットフォームの窓口、あるいは専門家への相談をおすすめします。
まとめ:知らないことは、恥ではありません
冒頭でお伝えしたXの騒動は、多くの人にとって「今まで意識したことがなかった」ことが、ある日突然、意識せざるを得なくなった出来事でした。
けれど、これは知識の欠如というより、制度自体が複雑すぎるという側面のほうが大きいと当スタジオは考えています。プラットフォームごとに契約状況が違い、団体ごとに検索システムと申請システムが分かれ、用途によって必要な表示が変わる——これを最初から把握している人のほうが、むしろ稀です。
大切なのは、「知らなかった」で立ち止まらず、調べる場所を知っておくことです。J-WIDとNexTone作品検索データベース、この二つの入口さえ覚えておけば、たいていの疑問はここから解決に向かいます。
ご相談はスタジオまで
「この曲、使っていいのか分からない」「CDに収録したいが管理団体が分からない」——そうしたご相談も、お気軽にスタジオスタッフまでお寄せください。
なお、著作権を「預ける側」の視点に立った記事も公開しています。ご自身の楽曲の著作権管理を検討されている方は、TuneCore・JASRAC・NexToneの選び方、NexToneとJASRACの違いもあわせてご覧ください。
出典・参考
本記事の記述は、以下の一次情報をもとにしています(いずれも2026年7月時点で確認)。
JASRAC
- YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用 https://www.jasrac.or.jp/users/internet/ugc/
- J-WID 作品検索について(検索のコツ) https://secure.okbiz.jp/faq-jasrac/category/show/206?site_domain=jp
- 作品データベース検索サービス「J-WID」 https://j-wid.jasrac.or.jp/
- 「音楽をつかう人」の窓口(J-TAKTについて) https://www.jasrac.or.jp/park/work/work_2.html
- 手続きの流れ(非商用配信) https://www.jasrac.or.jp/users/internet/procedure-nbusiness/
NexTone
- NexTone作品検索データベースの使い方 https://search.nex-tone.co.jp/
- YouTube等の動画配信サービスで音楽を利用する際の注意事項 https://www.nex-tone.co.jp/copyright/users/int/youtube_precautions.html
- CD・レコード等に録音(許諾マーク・許諾番号の表示要件) https://www.nex-tone.co.jp/copyright/users/rec.html
- NexToneと利用契約を締結している動画配信サービス(一覧、2026年6月25日更新) https://www.nex-tone.co.jp/files/ugc.pdf
- Xでの音楽利用ガイド:個人によるXへの投稿に関する申請・報告マニュアル https://www.nex-tone.co.jp/files/NexTone_GuideforNoncommercialXusers.pdf
報道
- なぜXの「歌ってみた」だけ音を消す? JASRAC「Xとは契約していない」と解説(ITmedia NEWS、2026年4月) https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2604/15/news076.html
改訂履歴
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2026-07-31 | 初版公開 |
