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[SHURE ( シュアー ) / DY30(1947〜1957年)]新規機材導入

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目次

[SHURE ( シュアー ) / DY30(1947〜1957年)] 新規機材導入

RED IGUANA STUDIOで新規導入を行った機材のご紹介を致します。
導入を行って欲しい機材リクエストなどございましたらお気軽にお問い合わせください。

機材カテゴリーダイナミックマイクロフォン
導入日2026-3-19
メーカー名SHURE BROTHERS(シュアーブラザーズ)
製品名DY30(1947〜1957年)
個 数1個
レンタル/貸出可能

1. また一つ、時代の証人が加わりました

RED IGUANA STUDIO の機材コレクションに、また一つ、音楽の黄金時代を生き抜いた重要な証人が加わりました。

今回導入したのは、SHURE Brothers 製のダイナミックマイク「DY30」 です。製造時期は 1947〜1957 年頃、イリノイ州エヴァンストン(Evanston, IL)で生産された、質実剛健なアメリカ製ヴィンテージマイクです。

ラベルには「DYNAMIC MODEL NO. DY30 / SHURE BROTHERS / MADE IN UNITED STATES OF AMERICA / PATENTED」と刻印されています。ブルーの楕円形バッジは、当時の SHURE 製品に共通するもので、半世紀以上を経た今もその輝きを失っていません。

2. SHURE Brothers とは:「世界標準」を作ったシカゴの会社

DY30 を語る前に、製造元である SHURE Brothers について簡単に触れておきます。

1925年、シドニー・N・シュア(Sidney N. Shure)によってイリノイ州シカゴで創業。当初はラジオ受信機のパーツを通信販売する小さな会社でしたが、1929年の世界恐慌をきっかけに自社製品の開発・製造へと舵を切ります。

その後の躍進は目覚ましく、1939年には世界初の単一エレメントによる単一指向性ダイナミックマイク「Model 55 Unidyne」 を発明。第二次世界大戦では軍用マイクの主要サプライヤーとなり、極寒の地から熱帯のジャングルまで過酷な現場で使われ続けたことで、揺るぎない品質と耐久性の評判を確立しました。

エルヴィス・プレスリー、フランク・シナトラ、ナット・キング・コール——20世紀を彩るレジェンドたちが SHURE のマイクを選び続けたのは、その「信頼性」と「音楽性」の両立があってこそです。後にSM57・SM58といった「世界標準」を生み出すことになるこの会社が、DY30 を製造していた1940〜50年代は、まさにその黄金期の入り口にあたります。

3. DY30 とは何か:幻の「流通モデル」という出自

DY30 について調べると、すぐに面白い事実にたどり着きます。

DY30 は、SHURE の Model 51 と実質的に同一の製品です。 ハウジング、エレメント、インピーダンス切り替えスイッチ、寸法(高さ 115.1mm × 幅 79.4mm × 奥行き 98.4mm / 794g)に至るまで、すべてが 51 と共通しています。

では、なぜ「DY30」という別名が存在するのか?

当時の SHURE は、マイクを単体で販売するだけでなく、PA システムやミキサー、アンプなどの音響機器と セット(パッケージ)で販売する流通ルートを持っていました。 DY30 という型番は、そうしたパッケージ販売向けに付与された OEM 的なモデル名です。中身は Model 51 と何ら変わるところがなく、同時代のコレクターの間では「DY30 = 51」という認識が定着しています。

つまりこの個体は、「型番の違う Model 51」として位置づけられる、音響史的に興味深い一本なのです。

4. 兄弟機 Model 51 の系譜:デコ様式が生んだアイコン

DY30 のルーツである Model 51 は、1940 年代後半にアメリカで広く普及したダイナミックマイクです。

その最大の特徴は、横長の分厚いグリルと重厚なクロームボディによる 「アール・デコ(Art Deco)」様式のデザイン にあります。流線型のフォルム、細かなスリット状のグリル、サテンクロームの鈍い光沢は、1950 年代のアメリカの音楽シーンそのものを体現しています。

前回導入した Model 55S(Small Unidyne) が縦長のエレガントなフォルムを持つのに対し、Model 51 / DY30 は横に広く、ずっしりとした存在感を放ちます。同じ SHURE でも、そのビジュアル・アイデンティティはまったく異なります。

当時の重さは 1¾ ポンド(794g、ケーブルなし)。手に持つと、その「一生モノ」として設計されたことが、重さから伝わってきます。

5. ナット・キング・コールが愛したマイク

このマイクにはひとりの偉大なアーティストの名前が寄り添っています。

ナット・キング・コール(Nat King Cole) — 20 世紀を代表するジャズ・ヴォーカリスト兼ピアニストです。滑らかで温かみのある声質と、端正なフレージングで知られる彼は、Model 51 / DY30 を長年にわたって愛用したマイクロホンの一つとして知られています。

「L-O-V-E」「Unforgettable」「Mona Lisa」——これらの名曲を包んだ空気感は、このマイクのサウンド・キャラクターと不可分です。ミッドレンジに厚みを持ち、高域を穏やかに丸める DY30 の特性は、彼のなめらかなテノールを完璧にサポートしたのでしょう。

このマイクの前に立つということは、コールが声を吹き込んだ時代と地続きの場所に立つということ。RED IGUANA STUDIO がこの個体を迎えた理由の一つも、そこにあります。

6. テクニカル解析:無指向性とマルチ・インピーダンスという設計思想

オリジナル・データシート(Copyright 1967, Shure Brothers Inc.)に基づき、DY30 = Model 51 の正確なスペックを紐解きます。

無指向性(Omnidirectional)という選択

まず、重要な特性から明確にしておく必要があります。DY30 / Model 51 は 無指向性(Omnidirectional) マイクです。

前回導入した Model 55S が「単一指向性(カーディオイド)」の先駆けとなった Unidyne テクノロジーを誇るのとは対照的に、51 / DY30 は 圧力型ダイナミック(Pressure Dynamic) と呼ばれる方式を採用しており、あらゆる方向から均等に音を収音します。データシートには明確に「Omnidirectional pickup characteristics」と記されています。

これは欠点ではなく、設計の目的が異なります。テープ・ワイヤー録音、固定・移動式 PA、放送実況——空間全体の音を拾う必要のある用途に向けて設計された、当時の「実用マイク」の正統な姿です。

周波数特性:60Hz〜10,000Hz

データシートに記載された周波数特性は 60Hz〜10,000Hz。現代の高域が伸びたマイク(〜20kHz 以上)と比べると、上限が明確に絞られています。これがあの「ボックス感」と「時代の密度」を生む根本的な理由です。音楽的においしいミッドレンジを凝縮したキャラクターは、この帯域設計から来ています。

マルチ・インピーダンス切り替えスイッチ

マイク前面のスイッチにより、3段階のインピーダンス切り替えが可能です。

設定インピーダンス開放回路電圧レベル感度 (EIA Gm)
L(Low)25〜50 Ω-78.5 dB (0.118 mV)-144.0 dB
M(Medium)150〜250 Ω-71.5 dB (0.265 mV)-143.0 dB
H(High)35,000 Ω-48.5 dB (3.75 mV)-145.0 dB

データシートでは、L(Low)設定が長距離ケーブルや強いハムノイズ環境での使用に推奨 されています。Low インピーダンスはケーブル長の制約を受けにくく、レスポンスやレベルへの影響がほぼないためです。現代のプロ用機器への接続では L 設定が最も適しています。

ボディ構造

ダイキャスト製ボディにクロームメッキを施した堅牢な設計。データシートには「severe conditions of use(過酷な使用環境)での信頼性ある動作」と明記されており、当時の SHURE が放送・PA 現場での実戦耐久性を最優先に設計したことがわかります。

7. 接続の壁:アンフェノール端子との格闘

前回の Model 55S に続き、今回も アンフェノール(Amphenol)3ピン・コネクター (91-MC3M)との格闘がありました。

現代の標準である XLR(キャノン)端子が普及する以前、1950 年代の SHURE 製品はこのネジ込み式の独自端子を採用していました。現行の XLR とはサイズも形状も根本的に異なるため、変換なしに現代の機材に接続することは不可能です。

当スタジオでは、この個体のために アンフェノール ⇄ XLR 変換ケーブル を用意し、ハンダの選定からシールド処理まで、当時の音響特性を損なわないよう細心の注意を払っています。この「接続の壁」を越えてこそ、DY30 のサウンドに出会えるのです。

8. サウンド・キャラクター:「ボックス感」が武器になる

DY30 のサウンドを一言で表すならば、「タイムマシン」 です。

データシートが示す周波数特性は 60Hz〜10,000Hz。現代のマイクが余裕で 20kHz 以上まで伸びるのに対し、DY30 はその上限で静かに幕を下ろします。高域は穏やかにロールオフし、代わりに ミッドレンジが主役として前面に出てきます。 経験者の言葉を借りれば「boxy(ボックス感がある)」であり、SM58 をさらに個性的にしたような、古い録音のテクスチャーを自然に帯びた音。

また、無指向性(Omnidirectional) という特性も音に大きく影響しています。部屋の空気感ごと包み込むような収音は、現代のタイトな指向性マイクとは異なる、空間の「ざらり」とした密度をもたらします。

これは欠点ではなく、「1950 年代の音楽的空気感」を封じ込める武器です。

現代の高解像度なデジタル環境で収録したとき、DY30 が加えるのは「情報量の多さ」ではなく「時代の密度」です。オールドスクールな R&B、ジャズ・ヴォーカル、ロカビリー——これらのサウンドを 21 世紀のプロダクションに取り込むとき、このマイクの存在価値は際立ちます。

9. RED IGUANA STUDIO での活用シーン

  1. ヴォーカルのダブリング / バッキング: リードヴォーカルには現代の高解像度マイクを使いながら、バッキング・ヴォーカルに DY30 を重ねることで、音像に「時代感」と「奥行き」が生まれます。
  2. ハーモニカ(ブルースハープ): カップして吹くブルース・ハーモニカとの相性は抜群。クラシックなシカゴ・ブルースの音を現代のセッションに持ち込めます。
  3. ドラム・ルームマイク: 部屋鳴りを狙ったルームマイクとして使うと、まるで古いレコードから抽出したような質感が得られます。
  4. 「質感」としての選択肢: DY30 の音は楽器ではなくテクスチャーです。必要なときに迷わず選べる「色」として、スタジオに常備します。

10. 最後に…

「DY30 は、ナット・キング・コールの声を受け止めた時代を今に伝えるマイクです。

正直に言えば、最新の Neumann や AKG のサイドには置けない。周波数特性もダイナミックレンジも、現代の基準では見劣りします。でも、それがすべてではありません。

音楽が何かを伝えるものであるならば、DY30 が伝えるのは『その時代に誰かが感動した空気』です。そのざらりとしたミッドレンジ、穏やかに落ちていく高域——これは欠点ではなく、半世紀以上の歴史が刻んだ個性です。

『あの時代の音を今に再現したい』そんなアーティストにとって、DY30 は最短距離の選択肢になりえます。ぜひ一度、このマイクの前に立ってみてください。」

特長(メーカー資料抜粋)

ヴィンテージ・ダイナミックマイク。放送・PA・レコーディング用途を想定したマルチ・インピーダンス対応モデル。(Data Sheet: Copyright 1967, Shure Brothers Inc.)

  • タイプ:ダイナミック・マイク(圧力型可動コイル式)
  • 指向性:無指向性(Omnidirectional)
  • 周波数特性:60Hz〜10,000Hz
  • マルチ・インピーダンス切り替えスイッチ搭載(前面 L / M / H)
  • インピーダンス:25〜50 Ω(L) / 150〜250 Ω(M) / 35,000 Ω(H)
  • 感度(EIA Gm @ 1kHz):-144.0 dB(L) / -143.0 dB(M) / -145.0 dB(H)
  • ボディ:クロームメッキ・ダイキャスト
  • 本体寸法:高さ 115.1mm × 幅 79.4mm × 奥行き 98.4mm
  • 重量:794g(ケーブルなし)
  • コネクタ:アンフェノール MC3M 3ピン(XLR 変換ケーブルにより現代機材への接続対応)
  • スタンドネジ:5/8″-27 インチネジ
  • 製造:アメリカ合衆国(イリノイ州エヴァンストン)

※その他機材などは下記の機材リストからご覧頂けます。


当スタジオでは、レコーディングからミックス・マスタリングまでトータルでサポートいたします。 質の高い制作環境を保つため「完全予約制」のプライベート空間となっておりますので、周りを気にせずご自身のペースで集中して制作していただけます。

営業時間: 火〜日 10:00 〜 19:00(月曜定休)
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