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[DPA Microphones / ST4006A ステレオペア] 機材紹介

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目次

[DPA Microphones / ST4006A ステレオペア] 機材紹介

RED IGUANA STUDIOで新規導入を行った機材のご紹介を致します。
導入を行って欲しい機材リクエストなどございましたらお気軽にお問い合わせください。

機材カテゴリーコンデンサーマイクロフォン(ステレオペア)
導入日2012-4-25
メーカー名DPA Microphones(ディーピーエー)
製品名ST4006A
個 数2本
レンタル/貸出可能

RED IGUANA STUDIOで新規導入を行った機材のご紹介を致します。
導入を行って欲しい機材リクエストなどございましたらお気軽にお問い合わせください。

1. デンマークから届いた、基準点のような静けさ

RED IGUANA STUDIO の機材ラインナップに、また一つ、重要な選択肢が加わりました。

今回導入したのは、DPA Microphones の d:dicate™ 4006A を2本、厳密なファクトリーマッチで揃えたステレオペア「ST4006A」 です。デンマーク・コペンハーゲン近郊で設計・製造されたこのマイクは、クラシック音楽の録音現場で長年にわたってリファレンスとして君臨し続けてきた一本です。

派手さはありません。誇張もありません。ただ、そこにある音を、あるがままに記録する——それが DPA 4006A の存在理由であり、このマイクを選ぶ理由そのものです。


2. DPA Microphones とは:B&K から受け継いだ「測定の血統」

DPA Microphones の歴史は、1992年よりはるか以前——1940年代のデンマークにまで遡ります。

Brüel & Kjær:すべての起点

Brüel & Kjær(B&K) は、1942年11月28日、エンジニアの Per Vilhelm BrüelViggo Kjær がコペンハーゲン工科大学(現・デンマーク工科大学)の同窓として共同設立した音響・振動計測の専門会社です。当時はナチス・ドイツによるデンマーク占領下という困難な時代でしたが、二人は騒音・振動の計測という明確な目標を持って会社を立ち上げました。

1950年代、B&K は世界で初めて科学的計測に耐えうる精度を持つコンデンサーマイクロフォンを開発します。振動・騒音の測定用途で培われたこの超精密な音響技術は、やがて音楽の世界にも影響を及ぼし始めます。デンマーク国営放送(DR:Danmarks Radio)が B&K の計測用マイクを試験的に音楽収録に使用したところ、その音質が非常に優れていることが判明しました。これが、B&K の社内にプロ・オーディオ向けマイクの専門部門を設立するきっかけとなります。

こうして生まれた B&K の「Series 4000」は、放送・レコーディング向けに設計された最初の本格的なプロ・オーディオ用マイクシリーズであり、その中心には 4006 オムニ指向性マイクが据えられていました。4006 は計測マイクの血統を直接受け継いだ製品であり、今日の DPA 4006A の直接の先祖です。

1992年:Danish Pro Audio の誕生

しかし、プロ・オーディオ部門は B&K という巨大な計測機器メーカーの中では常に傍流でした。1990年代初頭、B&K はプロ・オーディオ部門を閉鎖する決断を下します。

このとき動いたのが、同部門でマイクの設計・開発に長年携わってきた二人のエンジニア、Ole Brøsted Sørensen(オーレ・ブロステッド・セーレンセン)と Morten Støve(モーテン・ストーヴェ)です。二人は B&K との間で「プロ・オーディオ製品の販売・サービス・開発を引き継ぐ」という契約を結び、1992年に Danish Pro Audio(DPA) を設立しました。

本社はコペンハーゲン北方の コッケダール(Kokkedal)、生産拠点は アスネス(Asnæs)。スピンオフ当初から人員の入れ替えはなく、設計思想もそのまま引き継がれました。実際、4006 などのオムニシリーズのカプセルは、当初しばらくの間 B&K が製造し続けていたほどです——設計者が同じであり、製造仕様も同じだったのですから、それは当然のことでした。

DPA の歩み:計測の精神を受け継いで

独立後の DPA は、B&K 時代の資産を土台に着実に発展していきます。

1995年には DanaBallerina(後の Muphone)の Dan Ingemann Jensen と Jens Jørn Stokholm と共同開発の形で、ラベリアマイクの先駆けとなる 4060・4061 シリーズのミニチュアコンデンサーマイクを発表。超小型でありながら B&K 由来の高い精度を持つこのマイクは、劇場・ブロードキャスト・映画制作の現場に DPA の名を広く知らしめました。

その後も世界最高水準のコンサートホール、主要な放送局、映画音楽の収録現場——あらゆる「音を真剣に記録する現場」へ DPA のマイクは浸透していきます。なお、B&K のマイクは DPA 設立よりはるか以前から宇宙開発の現場にも採用されており、1970年のアポロ 13 号打ち上げ時のロケット音は B&K 4133 カプセル(現在の DPA 4004/4007 の先祖にあたるカプセル)によって記録されています。 DPA はその技術的継承者として、2021年には NASA の Perseverance ローバーに搭載された DPA 4006 が人類史上初めて火星の大気音を収録——地球上のコンサートホールから宇宙の惑星まで、この血統のマイクが届いた場所の広さは驚くべきものがあります。

2017年には CORE by DPA テクノロジーを発表。従来のプリアンプ設計を刷新し、特にミニチュアラベリアマイクにおける歪みを大幅に低減、ダイナミックレンジを拡大しました。この技術はデジタルワイヤレス送信機との組み合わせにおける音質問題を根本から解決するものとして業界から高く評価されています。

2025年には CORE by DPA をさらに進化させた CORE+ テクノロジーを発表。動的レンジ全域にわたる歪みの排除をさらに深化させた、現時点での最新技術です。

現在、DPA Microphones はイタリアのプライベートエクイティ Palladio Holding S.p.A. の傘下にあり、CEO の Kalle Hvidt Nielsen のもとで開発・製造を続けています。製品は今も全品デンマーク国内で組み立てられ、各マイクは最大 200 工程の製造プロセスと15 回ものキャリブレーションを経て出荷されます。

「良い音がするマイク」ではなく、「音楽の真実を伝えるマイク」。1942年の B&K 創業から 80 年以上受け継がれてきた、この思想こそが DPA という会社の核心です。


3. 4006A とは何か:無指向性リファレンスの頂点

DPA 4006A は、d:dicate™ シリーズに属するプロフェッショナル・グレードの無指向性(Omnidirectional)コンデンサーマイクです。直径 16 mm のカプセルを搭載し、圧力トランスデューサー方式(Pressure)を採用することで、あらゆる方向から均等に、かつ極めて正確に音を収音します。

プリポーラライズドコンデンサーカートリッジを MMP-A プリアンプボディに組み合わせたモジュラー設計は、DPA の「交換式カプセルシステム」の一部でもあります。ボディには -20 dB のスイッチャブルアッテネーターを内蔵しており、最大 147 dB SPL(ピーク前クリッピング)まで対応する高い耐入力性能を誇ります。


4. ST4006A というパッケージ:「ペア」である意味

ST4006A は、4006A を単体で2本揃えただけのセットではありません。

ファクトリーマッチの厳密さこそが、このステレオペアの価値です。 DPA は既にリファレンス標準として公差を極限まで絞り込んでいますが、ST4006A ではさらにその中から選抜された2本を、周波数特性・感度ともに ±0.5 dB 以内、さらに最大位相応答差 5° 未満という基準でマッチングし、一組のセットとして出荷します。

この数値が意味するのは、左右の音像が空間上で正確に一致する、ということです。ステレオ録音において左右の差異は位相の乱れや音像の歪みに直結します。ST4006A はその問題を工場出荷の段階で根本から排除した製品です。

付属品として、専用スタジオグリッド × 2、ウィンドスクリーン × 2、マイクホルダー × 2、そしてPeli ケースが同梱されます。デンマークの現場仕事が要求する実践的な堅牢さも、このパッケージに込められています。


5. テクニカル解析:10 Hz から 20 kHz まで、±2 dB の約束

周波数特性という「誠実さ」

4006A の公称周波数特性は 10 Hz〜20 kHz(±2 dB)。下は可聴域を超えた超低域から、上は人間の聴覚の限界まで、フラットに伸びます。

これは性能の主張ではなく、設計の誠実さの表明です。色付けしない、強調しない、削らない。あらゆるソースに対して同じ「顔」で向き合う。それが 4006A というマイクの一貫した態度です。

詳細スペック(DPA Microphones 公式データシートより)

指向特性無指向性(Omnidirectional)
動作原理圧力(Pressure)
カートリッジタイププリポーラライズドコンデンサー(Pre-polarized condenser)
周波数特性10 Hz〜20 kHz(±2 dB)
感度(±2 dB / 250 Hz)40 mV/Pa;-28 dB re. 1 V/Pa
等価雑音レベル(A特性)典型値 15 dB(A)(最大 17 dB(A))
等価雑音レベル(ITU-R BS.468-4)典型値 27 dB(最大 29 dB)
S/N 比(A特性)典型値 79 dB(A)
ダイナミックレンジ典型値 124 dB
最大 SPL(クリッピング前)147 dB peak
THD139 dB SPL peak 以下で 1% 未満
スイッチャブルアッテネーター0 dB / -20 dB
出力インピーダンス200 Ω 未満
最小負荷インピーダンス2 kΩ
ケーブル駆動能力100 m(328 ft)
出力バランス方式Impedance balancing with Active Drive
CMRR60 dB 超
ファントム電源P48(48 V ±4 V)
消費電流2.8 mA
最大出力電圧(RMS)8 V
極性正音圧で Pin 2 に +V
コネクタXLR-3M(Pin 1: シールド、Pin 2: 信号 + 位相、Pin 3: – 位相)
カラーマットブラック
重量163 g(5.7 oz)
マイク直径16〜19 mm(0.6〜0.75 in)
カプセル直径16 mm(0.6 in)
マイク全長170 mm(6.7 in)
動作温度範囲-40℃〜45℃(-40°F〜113°F)
相対湿度(RH)90% 以下
マッチング許容差(周波数特性・感度)±0.5 dB
キット内位相偏差5° 未満
製造国デンマーク

等価雑音レベル 15 dB(A) という数字の意味

15 dB(A) という自己ノイズは、コンデンサーマイクとしても非常に低い部類に入ります。ピアニシモのストリングス、遠鳴りのオーケストラ、囁き声のソプラノ——最も繊細な音楽的瞬間においても、マイク自身のノイズが演奏の邪魔をしません。これは「録れている」ではなく「存在していない」に近い透明感です。

無指向性がもたらす近接配置の自由

単一指向性マイクには「近接効果」があります——音源に近づけるほど低域が膨らむ特性です。無指向性マイクにはそれがありません。4006A は音源にどれだけ近づけても、低域の誇張なしにナチュラルな音像を維持します。 これはピアノのハンマーや弦楽器の胴体に非常に近い位置へのセッティングを可能にします。

グリッドによる音響特性の変化

データシートには、グリッドの種類による周波数特性の変化が詳細に示されています。

  • 標準グリッド(付属品): スタジオでの通常収音向け。フラットな特性を基本としつつ、10 kHz 以上でオンアクシスとディフューズフィールドの差が生じる
  • クローズマイキング用台形グリッド DD245: 近接マイキング時の使用に最適化。音源に密着させた際の高域特性を補正し、20 kHz 近くまでほぼフラットな特性を維持する
  • ディフューズフィールドグリッド DD297(黒): 拡散音場環境での収音に最適化。高域方向への指向特性を均一化する設計
  • ノーズコーン AU0777: 縦方向にマイクを立てたとき、あらゆる周波数帯域にわたって均一な無指向性を実現。測定用途や特定のマイキングポジションに有効

付属のスタジオグリッドと各オプションを使い分けることで、同一の 4006A カプセルから用途に応じた最適な特性を引き出せるのも、この設計の奥深さです。


6. AB ステレオという技法:空間を「写真」として記録する

ST4006A が最も輝くのは、AB ステレオ(Spaced Pair)技法との組み合わせです。

2本のオムニマイクを一定の距離(用途に応じて 0.5〜3 m 以上まで様々)で左右に離し、音源の空間的な広がりを左右への音の到達時間差(ITD: Interaural Time Difference)によって再現する——それが AB ステレオの原理です。ORTF や XY などの指向性マイクを用いたステレオ技法が「レベル差(音量の差異)」で音像を構築するのに対し、AB 法は「時間差」で空間を写し取ります。

結果として得られるのは、広大で自然な空間情報を持つステレオイメージです。コンサートホールの残響が前後左右から包み込む感覚、ステージ上の各楽器の「存在する場所」の感覚——これらは AB ステレオと 4006A の組み合わせが最も得意とする領域です。

なお、オムニ特性ゆえに部屋や会場の響きをそのまま拾うことが AB 法の特性でもあります。会場の音響品質が録音に直接反映されるため、良質なホールや空間でこそ真価を発揮します。


7. サウンド・キャラクター:「色のなさ」という最高の個性

4006A のサウンドを一言で表すとしたら、「透明」 です。

多くのマイクは、設計の段階で何らかのサウンドカラーを持ちます。ある帯域を持ち上げ、ある帯域を穏やかに削ることで、「そのマイクらしい音」が生まれる。それ自体は決して悪いことではありません。しかし 4006A の設計方針は根本的に異なります。

加えない。削らない。ただ、そこにある音を記録する。

この哲学から生まれるのは、「マイクの音」ではなく「ソースの音」が録音に現れるという体験です。ボーカリストの声の倍音構造、ピアニストのタッチの微妙な変化、ヴァイオリンの松脂の擦れる質感——これらがそのまま記録されます。

逆に言えば、演奏者の技術や楽器の個性を隠すことができないマイクでもあります。優れた音楽には最高のキャンバスになり、問題のある録音環境はそのまま記録される。4006A は「正直なマイク」です。


8. RED IGUANA STUDIO での活用シーン

  1. オーケストラ・アンサンブルの AB ステレオメインペア: ホールやライブ会場での出張レコーディングにおいて、空間情報ごと音楽を記録するメインマイクとして。クラシックから現代音楽まで、アコースティックな音楽空間の記録に。
  2. ドラムオーバーヘッド: 近接効果の心配なく、ドラムキット全体の音像を自然に捉えるオーバーヘッドとして。シンバルの広がりとスネアの芯が同時に成立する自然な収音が可能です。
  3. グランドピアノのステレオ収音: 蓋の開閉角度や弦の配置に沿ったマイキングで、打鍵のアタックと響板の共鳴を2本のマイクで立体的に捉える。ピアノ録音の教科書的な選択肢。
  4. 合唱・コーラス: アンサンブルの広がりと各声部の空間的なまとまりを同時に記録。声の集合体が持つ「立体感」を余すことなく収音します。
  5. アコースティック弦楽器: ヴァイオリン、チェロ、コントラバス——楽器本体の鳴りと演奏空間の空気感を分けることなく一体として記録する、アコースティック楽器との高い親和性。
  6. リファレンス録音 / 音響測定: ルーム測定や、他のマイクとの比較試聴のための「基準点」として。DPA 4006A は多くのプロフェッショナルが「本来の音」を確認するために使用する、事実上の標準器です。

9. 最後に…

「4006A の前に立つと、言い訳ができなくなります。

良いマイクは、時として演奏者の粗を隠してくれます。あるいは逆に、マイク自身の音で楽曲をコーティングしてくれます。しかし 4006A はそのどちらもしません。ただ、そこにある音を、そのまま記録します。

それは時として厳しく、しかし常に正直です。

RED IGUANA STUDIO がこのペアを導入したのは、『ここを基準にする』という意思表明でもあります。色を加えたいときのための多くのマイクは既にあります。ST4006A は、その逆——すべての比較が始まる『ゼロ点』として、当スタジオに加わりました。

アコースティックな音楽を真剣に記録したいと考えているアーティスト、エンジニア、プロデューサーに、このマイクの前に立つ機会をぜひ提供したいと思っています。」


特長(メーカー資料抜粋)

プロフェッショナル・グレードの無指向性コンデンサーマイク。厳密なファクトリーマッチによる AB ステレオ録音用ステレオペア。(DPA Microphones 公式データシートに基づく)

  • タイプ:プリポーラライズドコンデンサー(Pressure 動作方式)
  • 指向性:無指向性(Omnidirectional)
  • 周波数特性:10 Hz〜20 kHz(±2 dB)
  • 感度:40 mV/Pa;-28 dB re. 1 V/Pa
  • 等価雑音レベル(A特性):典型値 15 dB(A)(最大 17 dB(A))
  • ダイナミックレンジ:典型値 124 dB
  • 最大 SPL(ピーク前クリッピング):147 dB peak
  • スイッチャブルアッテネーター:0 dB / -20 dB 内蔵
  • ファントム電源:P48(48 V ±4 V)、消費電流 2.8 mA
  • コネクタ:XLR-3M(3ピン)
  • 重量:163 g(5.7 oz) マイク直径:16〜19 mm 全長:170 mm
  • カプセル直径:16 mm
  • 動作温度範囲:-40℃〜45℃、相対湿度 90% 以下
  • ステレオマッチング精度:±0.5 dB 以内、位相偏差 5° 未満
  • セット内容:4006A × 2、スタジオグリッド × 2、ウィンドスクリーン × 2、マイクホルダー × 2、Peli ケース
  • 製造国:デンマーク

※その他機材などは下記の機材リストからご覧頂けます。


当スタジオでは、レコーディングからミックス・マスタリングまでトータルでサポートいたします。 質の高い制作環境を保つため「完全予約制」のプライベート空間となっておりますので、周りを気にせずご自身のペースで集中して制作していただけます。

営業時間: 火〜日 10:00 〜 19:00(月曜定休)
[ 制作のご依頼・ご相談窓口【無料】]

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