MENU

[Astatic(アスタティック)/ Model77(1940年代〜50年代)] 新規機材導入

Astatic-Model77-07
目次

[Astatic(アスタティック)/ Model77(1940年代〜50年代)] 新規機材導入

RED IGUANA STUDIOで新規導入を行った機材のご紹介を致します。
導入を行って欲しい機材リクエストなどございましたらお気軽にお問い合わせください。

機材カテゴリーダイナミックマイクロフォン
導入日2026-3-19
メーカー名Astatic Corporation(アスタティック・コーポレーション)
製品名Model 77(1940年代〜1950年代)
個 数1個
レンタル/貸出可能

1. オハイオの記憶が、スタジオに届いた。

RED IGUANA STUDIO の機材コレクションに、またひとつ、音楽の黄金時代を生き抜いた重要な一本が加わりました。

今回導入したのは、Astatic Corporation 製のダイナミックカーディオイドマイク「Model 77」です。オハイオ州コニョート(Conneaut, Ohio)で生産された、質実剛健なアメリカ製ヴィンテージマイクです。

ラベルには「THE ASTATIC CORP. / CONNEAUT, OHIO MADE IN U.S.A. / MOD. NO. 77 / PATENT NOTICE INSIDE」と刻印されています。重厚なサテンクロームのキャストハウジング、スイングアーム式スタンドアダプター、そしてボディ前面の3段インピーダンス切り替えスイッチ——すべての意匠に、時代の誇りと実用の美学が詰まっています。

2. Astatic Corporation とは:1930年創業、オハイオの音響開拓者

Model 77 を語る前に、製造元である Astatic Corporation について触れておきます。

Astatic自身のカタログには「The Nation’s Sound Source Since 1930」と謳われており、1930年の創業以来アメリカの音響産業を支えてきたメーカーです。1933年に発表した D-104 は、ハムラジオ(アマチュア無線)の世界で半世紀以上にわたって「スーパートークパワー」の代名詞として君臨し続けました。

なお、Astatic のクリスタル・セラミック系マイク(JT-30、D-104)はブルースハープ奏者がカップして吹く奏法との相性で広く知られ、シカゴ・ブルースの現場でも愛用されたと言われています。ただし、これは主にJT-30やD-104に関する評判であり、今回ご紹介する Model 77(ダイナミック型)とは設計思想の異なる別系統の製品です。

そして Model 77 は、Astatic カタログにおいて「sets a standard for positive anti-feedback cardioid microphones(ポジティブなアンチフィードバック・カーディオイドマイクの新基準を打ち立てた)」と称されるほどの自信作として位置づけられていました。

3. Model 77 とは何か:放送・PA・録音、三つの現場を制した一本

Model 77 の外観を見ると、まず目を引くのが縦長の長方形グリルです。均等に並んだスリット状の開口部が上下に連なり、頂上部にはポリッシュされたクロームのキャップが乗る。横から見ると、ずんぐりとした肉厚のボディに、スイングアームのマウントが力強く接合されています。

このマイクが公式に謳われた用途は「Rugged Public Address and Industrial Sound Installations(堅牢なPA・産業音響設置用)、Broadcasting, Recording, and other General Applications(放送、録音、その他一般用途)」——つまり、ステージ・スタジオ・放送局のあらゆる現場を想定した設計です。

カタログに記された主な特徴は以下のとおりです。

  • Astatic 独自の焼結青銅(Sintered Bronze)音響フェイジングシステムにより、前後比 18 dB の指向性を実現
  • DuPont Mylar® ダイアフラム採用——湿気・温度変化・多くの酸やアルカリに影響されない耐久設計
  • ダイナミックカートリッジをゴム系素材でサスペンド——外部振動を遮断
  • スイベルヘッドは垂直から 90° まで傾斜可能、ロック機構付き ON/OFF スイッチ搭載
  • 標準スレッド(5/8″-27)対応——あらゆるデスク・フロアスタンドへの取り付けが可能

4. このマイクの前に立っていた人たち

Astatic Model 77 を使ったと言われているアーティストの名前を並べると、初期ロックンロールの重要人物たちが並びます。

Jerry Lee Lewis(ジェリー・リー・ルイス)はライブパフォーマンスで Model 77 を使ったと言われています。Little Richard(リトル・リチャード)、Eddie Cochran(エディ・コクラン)、Bo Diddley(ボ・ディドリー)、Gene Vincent(ジーン・ヴィンセント)も、このマイクを使ったと言われているアーティストです。Elvis Presley(エルヴィス・プレスリー)の使用例も伝えられていますが、彼は SHURE 55 の使用でより広く知られています。

※これらのアーティスト使用歴は、当時のカタログや広告物そのものではなく、後年のコレクター・中古販売資料に基づく伝聞情報です。

5. ダイナミックカーディオイドという設計思想

Astatic の同時代ラインナップには JT-30 シリーズ(クリスタル/セラミック)や D-104(クリスタル)といったピエゾ型も多数ありましたが、Model 77 はそれらとは異なり、可動コイル式のダイナミックエレメントを採用しています。

カーディオイド(単一指向性)という特性が意味するのは、前面の音を主に拾い、背後からのフィードバックやノイズを 18 dB の差で抑制するということ。これは当時の PA 環境において画期的な性能であり、Astatic がこのマイクを「ポジティブなアンチフィードバック・カーディオイドマイクの新基準」と謳った根拠がここにあります。

6. テクニカル解析:公式カタログに基づくスペック

Astatic 公式カタログ(1970年代版)掲載の Model 77 スペックシートに基づき、正確な仕様を記録します。

インピーダンス切り替えスイッチ(3段)

設定インピーダンス出力レベル主な用途
Low30〜50 Ω−52 dBバランス接続・長距離ケーブル・現代の XLR 機器
Medium150〜250 Ω−53 dB中距離ケーブル・一般 PA 機器
High40,000 Ω(EIA)−48 dBハイインピーダンス入力・真空管アンプ・ギターアンプ直結

(出力レベルはすべて Re: 1 mw/10 microbars、Lo Z;Re: 1 volt/microbar、Hi Z)

カタログでは Low インピーダンス設定が長距離ケーブルやノイズ環境での使用に推奨されています。現代のマイクプリアンプ(ローインピーダンス入力)への接続では Low 設定が最適です。

周波数特性

30〜15,000 Hz。低域は 30 Hz まで伸び、高域は 15 kHz で穏やかに幕を下ろします。現代のマイクが余裕で 20 kHz 以上まで伸びるのに対し、この帯域設計が Model 77 特有の「ミッドレンジの密度感」を生む根本的な理由です。

本体スペック

項目仕様
寸法幅 2⅛” × 高さ 8″ × 奥行き 2¹¹⁄₁₆”(約 54 × 203 × 68 mm)
重量約 2 lbs. 6 oz.(ケーブル込み、約 1,077 g)
コネクターAmphenol 91-MC3M 3ピン(ビルトイン)
ケーブル20フィート(約 6 m)重耐久 3 線ケーブル付属
スイッチロック機構付き ON/OFF スイッチ(ベース組み込み)
仕上げサテンクローム・キャストハウジング、ブラックグリルライナー

7. 接続の壁:Amphenol 91-MC3M から現代へ

今回の個体においても、現代の XLR 標準規格との接続変換が必要となりました。

Model 77 に搭載された Amphenol 91-MC3M 3ピン・コネクターは、現行の XLR(キャノン)とはピン配列もサイズも根本的に異なります。これは SHURE DY30(過去の導入機材)での変換作業と同種の課題です。

当スタジオでは、Amphenol 91-MC3M → XLR 変換ケーブルを用意し、Low インピーダンス設定でのマイクプリアンプへの正規接続を実現しています。ハンダの選定からシールド処理まで、ダイナミック素子の音響特性を損なわないよう細心の注意を払っています。

8. サウンド・キャラクター:「時代のフィルター」を通した音

Model 77 のサウンドを一言で表すならば、「アメリカ音楽の正史」です。

周波数特性 30〜15,000 Hz が示すとおり、高域は穏やかにロールオフし、ミッドレンジが主役として前面に出てきます。カタログが謳う「high fidelity response and high output level combined with an outstanding uni-directional pattern(高忠実度レスポンスと高出力レベルを卓越した単一指向性パターンと組み合わせた)」という設計は、当時の放送・録音の美的基準に合わせて最適化されたものです。

カーディオイド指向性によってフィードバックを抑えながらも、部屋の空気感をほどよく含んだ収音——これは現代の超単一指向性マイクとは異なる、「人の声が持つ自然な広がり」を逃さない音の掴み方です。

9. RED IGUANA STUDIO での活用シーン

  • ヴォーカルのダブリング / バッキング: リードヴォーカルには現代の高解像度マイクを使いながら、バッキング・ヴォーカルに Model 77 を重ねることで、音像に「時代感」と「奥行き」が生まれます。ロカビリー・カントリー・初期ロックンロールに特に有効です。
  • ハーモニカ(ブルースハープ): ダイナミック素子ならではのレスポンスにより、クラシックなロックンロール〜ブルース寄りの質感を現代のセッションに持ち込めます。
  • ドラム・ルームマイク: 部屋鳴りを狙ったルームマイクとして使うと、まるで古いレコードから抽出したような質感が得られます。カーディオイドの指向性コントロールが、現場での使い勝手を高めます。
  • 「質感」としての選択肢: Model 77 の音はエフェクトではなく、素材の個性です。必要なときに迷わず選べる「色」として、スタジオに常備します。

10. 最後に…

Model 77 は、1950年代前後のアメリカの放送局とスタジオが共有していた「音の基準」を今に伝えるマイクです。

正直に言えば、現代の Neumann や AKG のサイドには置けません。周波数特性もダイナミックレンジも、今日の基準では見劣りします。でも、それがすべてではありません。

30〜15,000 Hz という帯域の中に凝縮されたミッドレンジの密度、穏やかに落ちていく高域——これは欠点ではなく、あの時代の音楽的空気感をそのまま封じ込めた個性です。

「あの時代の音を今に再現したい」そんなアーティストにとって、Model 77 は最短距離の選択肢になりえます。ぜひ一度、このマイクの前に立ってみてください。


特長(Astatic 公式カタログに基づく)

  • ヴィンテージ・ダイナミックカーディオイドマイクロフォン。放送・PA・レコーディング用途を想定したマルチ・インピーダンス対応モデル。(The Astatic Corporation, Conneaut, Ohio, U.S.A.)
  • タイプ:ダイナミック・マイクロフォン(可動コイル式)
  • 指向性:カーディオイド(単一指向性)
  • 周波数特性:30〜15,000 Hz
  • 出力:−48 dB(Hi Z)/ −52 dB(Lo Z, 30/50Ω)/ −53 dB(Medium, 150/250Ω) Re: 1 mw/10 microbars(Lo Z)、Re: 1 volt/microbar(Hi Z)
  • 前後比:18 dB
  • マルチ・インピーダンス切り替えスイッチ搭載(Low / Medium / High)
  • インピーダンス:Low 30〜50 Ω / Medium 150〜250 Ω / High 40,000 Ω(EIA)
  • 音響フェイジング:焼結青銅(Sintered Bronze)フィルター採用
  • ダイアフラム:DuPont Mylar®
  • 本体寸法:幅 2⅛” × 高さ 8″ × 奥行き 2¹¹⁄₁₆”(約 54 × 203 × 68 mm)
  • 重量:約 2 lbs. 6 oz.(ケーブル込み、約 1,077 g)
  • コネクター:Amphenol 91-MC3M 3ピン(XLR 変換ケーブルにより現代機材への接続対応)
  • スタンドネジ:5/8″-27 インチネジ
  • 仕上げ:サテンクローム・キャストハウジング、ブラックグリルライナー
  • 製造:アメリカ合衆国(オハイオ州コニョート)
  • 生産期間:1940年代後半デビュー、1970年代前半頃まで販売されていたと予想される(1966年版・1970年代版いずれの正規販売カタログにも掲載されていたことから推測)

※その他機材などは下記の機材リストからご覧頂けます。


当スタジオでは、レコーディングからミックス・マスタリングまでトータルでサポートいたします。 質の高い制作環境を保つため「完全予約制」のプライベート空間となっておりますので、周りを気にせずご自身のペースで集中して制作していただけます。

営業時間: 火〜日 10:00 〜 19:00(月曜定休)
[ 制作のご依頼・ご相談窓口【無料】]

Astatic-Model77-07

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次