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【解説】AIで作った音楽の著作権はどうなる?制作現場が知っておくべき2025年最新ガイド

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本記事は2026年6月19日現在の情報をもとに執筆しています。法律・業界動向は今後変わる可能性がありますので、最新情報は各公的機関・サービスの公式発表をあわせてご確認ください。

「プロンプト一つで楽曲が生まれる時代に、その音楽は誰のものか」という問いは、もはや哲学的な思考実験ではありません。スタジオに届くデモ音源の中に、AIが生成したと思しき楽曲が混ざっていても不思議ではない今、著作権という問題は、音楽制作に携わるすべての人にとって避けて通れないリアルな課題になりつつあります。

Suno、Udio、あるいはそれらに類する生成AIツールを使って音楽を作った場合、その楽曲の権利はどこに帰属するのか。そもそもAIが作ったものに著作権は発生するのか。商用利用はできるのか。配信や登録はどうなるのか。

本記事では、音楽制作に携わるプロ・セミプロの方を対象に、現時点での法的な整理から国際的な動向、そして実務上の注意点まで、できる限り体系的にまとめてお届けします。法律の世界はいまも急速に動いています。本記事はあくまで2026年6月現在における状況の解説であり、法的助言を提供するものではありませんが、制作現場で判断を下す際の羅針盤として活用いただければ幸いです。


目次

1. そもそも「著作権」とは何か——AIが問いを鋭くする

著作権とは、人間が思想・感情を「創作的に表現」したものを保護する権利です。日本の著作権法の根底には、「創作した人間」の存在が前提として組み込まれています。音楽であれば、メロディ・歌詞・編曲などが創作物として保護され、作った人(著作者)に一定の権利が与えられる仕組みです。

ここにAIが登場すると、話は一気に複雑になります。AIは人間ではありません。人間の創意や思想を持たず、プロンプトという入力に対して確率的な演算を行い、出力を返すシステムです。とすれば、AIが生成した楽曲には、従来の著作権法の枠組みでは権利が発生しないというのが、現時点における法的な原則です。

しかし実際の制作現場では、「純粋にAIだけが作った楽曲」と「人間がAIを道具として使って作った楽曲」の間には連続したグラデーションがあり、その境界をどこに引くかが最大の争点になっています。


2. 日本の現状——著作権法とJASRACの立場

「AIのみが作った音楽」には著作権は認められない

現行の日本の著作権法において、AIが自律的に生成した音楽には著作権は認められないというのが現時点での解釈です。これは、著作権法が「人の創作的寄与」を保護の前提としているためであり、AIそのものが著作権の主体にはなれません。

JASRACも2023年に指針を示しており、AIが自律的に作詞・作曲した作品は管理対象としないことを明確にしています。「人間の創作的寄与がない場合(シンプルな指示に基づいてAIが自律的に生成した歌詞または楽曲)は著作物に該当しないため、管理を引き受けていない」というのがJASRACの公式な立場です。

「人間がAIを使って作った音楽」は保護される場合がある

一方、AIを「道具」として活用し、人間が創造的な判断を重ねて仕上げた楽曲については、その人間の寄与が認められる範囲で著作権が発生しうると考えられています。

たとえば、AIが生成したフレーズを素材として、エンジニアやプロデューサーが大幅に編集・再構成し、独自の表現を加えた場合。あるいはAIへのプロンプト設計そのものに高度な創作性がある場合。これらのケースでは、人間の創作的寄与として保護が認められる余地があります。

ただしその判断は一律ではなく、「どの程度の創作性があったか」を個別に評価するしかないのが現状です。現場においては、制作プロセスを可能な限り記録・証明できる状態にしておくことが、将来の権利主張において重要な意味を持ちます。

文化庁のガイドラインという道標

2024年3月、文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」を公表し、同年7月にはより実務的な「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」も発表しました。これらの文書は法的拘束力を持つものではありませんが、AI開発者・提供者・利用者それぞれが直面するリスクをどう低減するかについて、現時点での公式見解として非常に参考になる内容です。

法制度の整備が追いつかない中でも、国としての考え方の方向性を示す重要な一歩と言えるでしょう。


3. 「学習フェーズ」と「生成フェーズ」——二段階で考える著作権問題

AI音楽の著作権問題を正確に理解するには、二つのフェーズを分けて考えることが重要です。

フェーズ①:AIへの学習データ問題

AI音楽ツールは膨大な既存楽曲を学習データとして使い、モデルを構築しています。このとき「無許可で著作権保護された楽曲が学習に使われているのではないか」という問題が生じます。

日本の著作権法には「情報解析目的の著作物利用」に関する規定(第30条の4)があり、一定の条件下でAI学習目的の著作物利用が認められてきました。ただし、この「柔軟な運用」に対しては権利者側から強い異論が上がっており、法的な議論は現在も継続しています。

フェーズ②:AI生成物そのものの問題

AIが実際に出力した楽曲が、学習データとして使われたアーティストの楽曲と「類似」している場合、著作権侵害が問われる可能性があります。「著作権侵害が成立するには、依拠性(元の著作物を参考にしたこと)と類似性(表現が似ていること)の両方が必要」というのが一般的な法的判断の枠組みですが、AIの場合は「意図なき類似」が起きうる点が従来の盗用問題と大きく異なります。

この二段階のリスクを意識することなく、AIで生成した楽曲をそのまま商用利用することは、法的観点からは相当なリスクを伴う行為です。


4. 海外の動向——訴訟と和解が動かす業界の地殻変動

RIAAによるSuno・Udio提訴(2024年)

国際的な動向を見渡すと、状況はさらにダイナミックに動いています。2024年6月、ソニー・ミュージック、ユニバーサル・ミュージック・グループ、ワーナー・レコードの3大メジャーレコード会社は、RIAA(全米レコード協会)を通じてAI音楽生成サービス「Suno」と「Udio」を著作権侵害で提訴しました。

訴状では、両サービスが著作権保護された音源を無断でAI学習に使用したことが指摘されており、1侵害あたり最大15万ドルの法定損害賠償が求められました。

Suno・Udio側は当初「フェアユースに当たる」と反論しましたが、訴訟の進展の中でアーティストの音源を無断で大量にコピーしていたことを認めるかたちになりました。RIAAはこの事実を厳しく批判し、「競合他社の多くがしているように、学習の同意を得るという合法的な道があったにもかかわらず、こういった手段を取った」と声明で述べています。

ライセンス交渉という次のフェーズへ

訴訟の解決に向けた動きとして、音楽会社側がSunoとUdioに対してライセンスを供与する方向での協議が進んでいることが明らかになっています。音楽会社がAI企業の株式を取得する可能性も含め、業界全体の構造は「訴訟」から「共存モデルの模索」へとシフトしつつあります。アーティストへの適切な対価還元を前提としたライセンス契約の枠組みづくりが、業界の次なる課題となっているのです。

テネシー州「ELVIS法」——声の権利という新潮流

著作権の枠組みとは別に、「声」そのものを個人の財産権として守ろうとする動きも注目に値します。2024年3月、テネシー州では「ELVIS法」が成立し、個人の名前・写真・肖像に加えて「声」も財産権として保護されることになりました。これにより、生成AIを使ったボイスクローニングや「AIカバー」も規制の対象となります。

日本ではまだ「声」を明文で保護するパブリシティ権の法整備には至っていませんが、この潮流は遅かれ早かれ日本の法制度にも影響を与えるでしょう。


5. 音楽配信・ストリーミングの実務——AI楽曲はどこまで使えるか

配信サービスの対応強化という現実

法的議論と並行して、音楽配信の現場でも変化が急速に進んでいます。TuneCore(ディストリビューター最大手)では生成AI楽曲の配信が不可となり、日本国内のサービスでも同様の動きが相次いでいます。「完全にAIが生成した楽曲はグレーではなくブラック」という認識が、業界標準として定着しつつある状況です。

つまり、法律上の白黒がつく前に、業界側がすでにAI純正楽曲を排除する方向に動いているのです。実務的な観点では、この「業界の自主規制」の動向を無視することはできません。

利用規約の確認が第一歩

SunoやUdioなど、個々のAIツールの利用規約も実務上の重要な判断軸です。多くのサービスでは、無料プランと有料プランで商用利用の可否や権利の帰属先が異なります。利用前に必ず規約を確認し、商用目的に適したプランを選択することが最低限の注意点です。

また、規約は頻繁に改定されます。「以前は大丈夫だった」という認識が、気づかぬうちに規約違反になっているケースも考えられます。継続的なアップデートを習慣にすることをお勧めします。


6. 制作現場のための実務チェックリスト

以上の内容を踏まえ、AI音楽を制作・利用する際の実務的な注意点を整理します。

① 使用するAIツールの利用規約を確認する

商用利用可能か、著作権・権利の帰属はどうなっているか、プランによる差異はないかを最初に確認しましょう。規約改定に備え、使用時点の規約を保存しておくことを習慣にするとなお安心です。

② 人間の創作的寄与を可能な限り記録・明示する

AIを道具として使い、その出力に対して大幅な編集・再構成・判断を加えた場合、その制作プロセスを記録しておくことが権利主張の基盤になります。プロンプトの設計、編集作業のログ、制作の経緯などを残しておきましょう。

③ 既存楽曲との類似性をセルフチェックする

AIが生成した楽曲が既存の有名楽曲に類似していないか、リリース前に確認することは最低限の作業です。意図しない類似が生まれやすい生成AIの特性を踏まえ、特定のアーティストやジャンルを強く参照するようなプロンプトは慎重に扱うべきです。

④ 配信・ストリーミングのガイドラインを確認する

利用するディストリビューターや配信サービスが、AI生成楽曲に対してどのようなポリシーを持っているかを確認します。申告義務がある場合もあるため、事前確認と正直な申告が重要です。

⑤ JASRAC登録は「人間の創作的寄与」が前提

JASRAC(日本音楽著作権協会)への登録は、人間の創作的寄与がある楽曲が前提です。AIのみが生成した楽曲の登録は受け付けられません。「人間が関与しているから大丈夫」と判断できるかどうか、制作プロセスを振り返りながら慎重に見極める必要があります。


7. AIで作った音楽、どう使うのが妥当か——三つの層で考える

技術的・法的な問題を超えて、制作者として考えておきたい本質的な問いがあります。

「AIが生成したフレーズを使ったら、自分の作品ではないのか」「そもそも、AIで作った音楽はどのように使うのが妥当なのか」

この問いへの答えは、AIの使い方を「三つの層」に分けて考えると、ずいぶんと整理しやすくなります。

層①:インスピレーション・スケッチとして使う

最も問題が少なく、かつ最も有益な使い方がこれです。「こういう雰囲気の楽曲を作りたい」という方向性の確認や、デモの叩き台として活用する使い方です。最終的に人間が一から作り直すのであれば、AIはリファレンス音源やムードボードと同じ役割を果たしているに過ぎません。

著作権的にも、表現として世に出る段階では人間の創作が全面に立っていますから、比較的クリーンな使い方と言えるでしょう。新曲の方向性に行き詰まったとき、AIに「こんな感じ」を生成させてみることで、思いがけない突破口が開けることもあります。道具として、これほど頼もしい使い方はないと思います。

層②:パーツ・素材として使う

リズムのループ、アンビエントのテクスチャー、BGMの一部など、AI生成物を「素材」として取り込み、そこに人間の判断と加工を重ねていく使い方です。

現実的に最もグレーゾーンが多い領域でもあります。使用するツールの利用規約、商用利用の可否、そして人間の創作的寄与がどの程度認められるかという法的判断——すべてが絡み合うゾーンです。しかし、「選ぶ・切る・重ねる・整える」という行為のひとつひとつに人間の感性と判断が宿るとすれば、そこに創作性が生まれる余地は十分にあります。

サンプリングの歴史がこれを証明しています。かつて「既存音源を切り貼りするのは創作ではない」と批判されたサンプリングは、選択・配置・文脈化という行為を通じた表現形式として、やがて音楽文化の中に確固たる地位を築きました。AIからの素材取り込みも、同じ道を歩む可能性があります。使い手のセンスと判断がアウトプットの質を決定する——これはどんな道具を使うときも変わらない真実です。

層③:生成物をそのまま”作品”として出す

法的にも倫理的にも、現状最も不安定な領域です。権利関係の曖昧さが商用リスクに直結するだけでなく、「誰が責任を持つ表現なのか」という問いに答えられないまま作品を世に送り出すことへの、制作者としての違和感は拭えません。

前述のとおり、TuneCoreをはじめとする配信プラットフォームが純粋なAI生成楽曲の配信を制限し始めており、業界の自主規制は法整備より先に進んでいます。「生成して出す」というフローが仮に技術的には容易であっても、その音楽が制作者の「表現」として社会に受け入れられるかどうかは、また別の問題です。

三つの層を貫く一つの問い

この三つの層を通じて見えてくることがあります。AI音楽の使い方における妥当性の本質は、「その音楽に自分の意図と判断がどれだけ宿っているか」——そしてそれを自分自身が語れるかどうか、ではないでしょうか。

エンジニア目線で言えば、AI生成のトラックをミックスしマスタリングする行為そのものが、すでに創造的関与の一つです。どのバランスで仕上げるか、どの帯域を整えるか、どの空気感を残すか——そこには確かに人間の美意識が介在しています。しかし同時に、「後処理をした人」という立場にとどまるのか、「表現の主体」として立つのかは、プロセス全体への関与の深さによって変わってきます。

語れない音楽は、たとえ人間だけで作っても薄い。語れる音楽は、AIを経由していても確かに存在する。制作者がAIとどう向き合うかという問いは、突き詰めれば「自分は何を表現したいのか」という、もっと根本的な問いに帰着するのかもしれません。


8. RED IGUANA STUDIOとしての見解

音楽は、技術ではなく表現です。そして表現には、必ず「誰かの意図と責任」が宿るべきだと私たちは考えています。

AIという道具の登場は、制作環境を劇的に変えました。しかしそれは、音楽の本質——感情を揺さぶる音の配列、聴く者の内側に届く何か——を変えるものではありません。

著作権という制度は、突き詰めれば「誰が表現に責任を持つか」を社会的に決定するための仕組みです。AIを使おうとも、責任を持つ制作者が存在する限り、その音楽は人の手による創作と呼べるでしょう。逆に言えば、プロンプトを打って生成されたものを無加工のままリリースすることは、著作権的リスクを抱えるだけでなく、制作者としての表現の放棄でもあると感じています。

RED IGUANA STUDIOでは、AI生成の素材を活用する制作についても丁寧に対応いたします。ただし、それが「誰かの表現」として世に出るためには、録音・ミックス・マスタリングのプロセスを通じた人間の判断と責任が不可欠だという信念は変わりません。

技術は変わり続けます。しかし、音楽に向き合う誠実さだけは、時代に流されることなく持ち続けたいと思います。


当スタジオでは、レコーディングからミックス・マスタリングまでトータルでサポートいたします。 質の高い制作環境を保つため「完全予約制」のプライベート空間となっておりますので、周りを気にせずご自身のペースで集中して制作していただけます。

営業時間: 火〜日 10:00 〜 19:00(月曜定休)
[ 制作のご依頼・ご相談窓口【無料】]

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